パルムドールを受賞したミヒャエル・ハネケ監督、子どもたちへの体罰と学校教育を描いた問題作を語る!
第62回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した映画『White Ribbon』(英題)について、ミヒャエル・ハネケ監督が第47回ニューヨーク映画祭(47th N.Y.F.F)の記者会見で語ってくれた。本作は、ファシズムが台頭しつつある第一次世界大戦前のドイツを舞台に、村の学校で儀式的に行われる子どもたちへの体罰と学校教育を描いたモノクロ作品。
劇中ではドイツの小さな町にあるコミュニティー全体を描いているため、多くの俳優たちが出演している。事前にリハーサルを行わないというハネケ監督は「リハーサルをやることが、俳優の手助けになるとは思っていない。そもそもカメラの前や舞台に立ったときに、初めて観客のプレッシャーを感じることで、リアルな演技が生まれると思うんだ。それが良い結果につながるとわたしは信じている」と今回も自分の演出論を映画に反映させている。
また的確に翻訳されない英語字幕について、内容の本質が違ってしまうのではないかとの質問には「もともと字幕は言葉を減らし、限られた数の言葉で表現しなくてはならない。それは、観客が字幕を読みながら、同時に映画を観るわけだから仕方がないこと。それにこの映画の英語字幕については、5人もの翻訳家が相談しながら作業をしてくれた。現在のわたしの英語能力が十分ではないため、的確な翻訳をしているかはわたし自身わからないけれど(笑)」とコメントした。
モノクロ撮影については「舞台設定の時代の写真はすべて白黒だから、その固定観念の上で観客にスムーズに鑑賞してもらうため、モノクロ撮影にしたんだ。またモノクロ映像には、物語と観客の間に距離感が生まれ、観る者に不穏な感情をかき立てる効果があるんだよ」と孤高の映画監督ならではの視点で撮影プロセスを語ってくれた。英語を話せるはずのハネケ監督だが、本作の意図を伝えるために、記者会見はすべて通訳を介してのものだった。これまでカンヌ国際映画祭では映画『ピアニスト』が審査員特別グランプリと主演女優賞・主演男優賞を受賞し、映画『隠された記憶』では監督賞を受賞している。そして本作で最高賞のパルムドールを受賞した。果たしてアカデミー賞外国語映画賞を狙えるか? 動向に注目だ。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)