「ゴミみたいな映画を観せられる観客は気の毒」審査委員長イニャリトゥ監督10分以上熱弁!
第22回東京国際映画祭
第22回東京国際映画祭の最終日にあたる25日、コンペティション部門の国際審査委員長を務めるアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が、東京サクラグランプリほか3冠に輝いたブルガリア映画『イースタン・プレイ』(カメン・カレフ監督)を絶賛する一方、現在の映画産業が置かれている危機的状況に警鐘を鳴らした。
受賞セレモニー後の記者会見で、映画祭の総評を求められたイニャリトゥ監督は、「あくまで観客の立場で、エモーショナルに心揺さぶり、五感に訴えかける映画を選ぼうと考えた」と選考基準を説明した上で、コンペ部門の15本中、映画『イースタン・プレイ』が一番際立っており、「映画は、真実というものが表現されてこそ、初めて美しさを放つ。『イースタン・プレイ』はまさにそういう映画だし、作り手の誠実さが伝わった」とコメント。さらにクランクアップ直前に事故でこの世を去った、男優賞受賞俳優のフリスト・フリストフについては「きっと天国で喜んでくれているはず」と語った。
一方、イニャリトゥ監督は映画『イースタン・プレイ』に登場する「僕には立つ力はある。でも立ち上がった後、立ち続けるための支えがないんだ」というセリフを引用し、「現在の映画産業も同じように支えを失っている状況だと思う」とコメント。「ばく大な製作費をかけてゴミのような映画が作られる裏で、優れた映画は製作費も不足し、完成しても日の目を見るチャンスがほとんどない。一番、気の毒なのはゴミみたいな映画を観せられる観客だと思う」と鬼気迫る表情で、約10分近く映画業界に苦言を呈した。
その上で、イニャリトゥ監督は「そうした危機的な状況において、国際映画祭という場は唯一のレジスタンス(抵抗運動)だと思う。『イースタン・プレイ』のような宝を見つけ出しても、それが世に出る機会がないのは非常に残念なこと。ぜひ東京国際映画祭には、優れた作品を広く認知させる役割をリードしてほしい」と語った。自身の監督デビュー作『アモーレス・ペロス』が9年前、第13回東京国際映画祭でグランプリと監督賞を受賞しているイニャリトゥ監督だけに、その言葉には非常に説得力があった。
「東京国際映画祭2009」の模様は11月3日(火)よる6:30よりWOWOWにて放送