次回作は『鉄男』以外!? 塚本晋也監督がこれまでの軌跡とこれからの展望を激白!
映画『鉄男 THE BULLET MAN』をニューヨークで行われているTribeca Film Festival(トライベッカ映画祭)に出展中の塚本晋也監督に、これまでの軌跡とこれからの展望を聞いた。塚本監督は、次回作は「鉄男」とは異なるものになることを明かしてくれた。
影響を受けた監督について、黒澤明監督と、マーティン・スコセッシ監督の名前を挙げた塚本監督は映画『鉄男 THE BULLET MAN』に、監督だけでなく、撮影、美術、編集にも携わっている。大学時代は8mm映画を撮っていたというが、「その時は、割と演劇的な映画を撮っていたんですよ」と明かした。その後CF製作会社で4年間働き、編集の技術を覚えたそうだ。「映画『鉄男 TETSUO』を作り始めて、編集のカットを短くしたり、映画館の観客がジェットコースターに乗ったような気分になれるような、全く真逆の方向に活動し始めたんです」と言うとおり、現在の作風はCF制作会社で培ったテクニックのたまものだそうだ。
塚本監督は、1作目の映画『鉄男 TETSUO』が、ローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞し、海外進出を果たしたときは、まだ海外に自分の作品を出展するという発想がなかったという。「日本でやることが世界でやることと同じ意味合い、つまり日本が自分にとっての世界だったんです。初めて海外に行って、向こうの人が自分の作品を気に入ってくれるとは、少しも思っていなかったんです。そんな思い込みの強いものを、海外の人たちが喜んでくれるということに、まず驚きましたね」と海外でも自身の作品が受け入れられたことへの感激を述べた。
また塚本作品をスタッフとして支えているのも、ファンたちだという。塚本監督は、「ボランティア活動をしてくれた若い人たちが、外部で仕事をしながら力を付けて、自分の映画に戻ってきてくれて、そんな彼らがこの映画のスタッフのメインになっているんです」と話した。そんなスタッフを含め、今や数多くのファンを獲得した塚本監督だが、監督して成功した今も、演者として作品にかかわり続けていたいと語ってくれた。
デジタルで製作している現在は「作りたかった映画をあきらめないで製作できるようになりました」と話した塚本監督。しかし、今後の作品について聞いてみると、やはり不況の影響があるようで、「よく整理しながら選んでいます。題材に関しては、都市と肉体のテーマからは、離れた作品になると思います。ただ、僕にとっては新しい世界なので少し時間がかかるかもしれませんね」と話し、次回作は「鉄男」の世界とは異なるものになることを明かした。
映画では、威圧的で衝撃的な映像を繰り広げているが、インタビューでは、温厚で優しい印象を受けた。「鉄男」を離れるという塚本監督の新たな挑戦に注目したい。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)
映画『鉄男 THE BULLET MAN』は5月22日よりシネマライズほかにて全国公開