名優ロバート・デュヴァルを直撃!亡くなる前に、自分の葬式を行おうとする男を描いた映画
映画『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』で名バイ・プレイヤーとして活躍し、自身が主演した映画『テンダー・マーシー』ではアカデミー主演男優賞の受賞経験もある名優ロバート・デュヴァルに、Tribeca Film Festival(トライベッカ映画祭)に出展している新作映画『ゲット・ロー/Get Low』(原題)について話を聞いた。
本作は、1930年代を舞台に、人里離れた場所で隠居生活を続けていた老人が、ある日自分が亡くなる前に、自分の葬式をすることを計画するというストーリー。テネシー州のキングストンに住んでいた老人フェリックス・ブッシュの実話が基になっている。
ロバートが演じるのは、もちろんその老人で、過去に秘密を持っている設定だ。しかしロバートは、「この役を演じるためにしたのは、妻ルシアーナの故郷、アルゼンチンの山岳にあるホテルのパティオで、山あいを見ながら瞑想して、自然を感じたってことだけさ」とその役づくりの苦労は全く感じていなかった様子。それもそのはず、さすが名優とでも言うべきか、ロバートの演技スタイルは、「リサーチをあえてせずに、自分のイマジネーションを信じて演じる」というものらしい。
何とロバートが最初に出演依頼を受けてから製作まで5年の月日が掛かってしまったという本作。ロバートはもうこの話は断ち切れになったのだとあきらめていたのだという。しかし、「亡くなる前に、自分の葬式を計画するなんて、すごくユニークなストーリーだし、そんな映画は今後リメイクされることもないだろうから、オリジナル作品としてぜひ参加したいと思っていたんだよ」と5年間その製作を待ち望んでいたことを明かした。
製作が危ぶまれ、何とか製作された本作だが、ロバートの次回作は、さらに製作が危ぶまれ続けていた災難続きのテリー・ギリアム監督の映画『ドンキホーテを殺した男(The Man Who Killed Don Quixote)』だそうだ。撮影現場に戦闘機の爆音が鳴り響き、大雨で機材が押し流され、主演俳優が腰を痛め、結局製作が頓挫したこの作品は、その顛末が『ロスト・イン・ラマンチャ』としてドキュメンタリー映画化されたことでも有名な、いわく付きの作品。腰を痛めたジャン・ロシュフォールの代わりに主役に抜てきされたロバートは、「テリーから渡された脚本は、まるでシェイクスピアの作品のように素晴らしいよ!」と語り、製作再開に新たな脚本が作られたことも明かしてくれた。
長年トップレベルの俳優として活躍しているロバートは、その秘訣として「常にハングリー精神で、新たなものに取り組んでいかなければならない! そういう作品にかかわっていれば、俳優として成長できるんだ」と79歳とは思えないパワフルな発言をしてくれた。また昔よりも今の方が出演依頼の多いことを明かし、「映画『アラバマ物語』に出演したときから、ずっと遅咲きの俳優と言われてきたんだ。遅咲きのまま永遠に演技していくよ!」と抱負を述べた。
自らが立ち上げたプロダクションButcher's Run Films(ブッチャーズ・ラン・フィルムズ)が製作した映画『クレイジー・ハート』の成功に喜んでいたロバートは、今でも一緒にタンゴを踊るほど夫婦仲も良いそうだ。彼はこれからも数多くの作品で、エネルギッシュな姿を見せてくれることだろう。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)