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日本の売れっ子CMディレクターがカンヌに短編で挑戦!「狙って作りました」とキッパリ!

第63回カンヌ国際映画祭

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カンヌ入りした平林監督
カンヌ入りした平林監督 - Photo:Harumi Nakayama

 第63回カンヌ国際映画祭の監督週間部門で短編『Shikasha』(原題)が選出された平林勇監督が現地入りし、シネマトゥディのインタビューに応じた。平林監督は2月にドイツ・ベルリン国際映画祭でも『aramaki』(原題)が短編コンペティション部門にノミネートされており、今年1年ですでに世界三大映画祭のうち二つに参加したことになる。平林監督は「ベルリンとカンヌのときでは周囲の反応が全然違う。日本において、カンヌは特別なんだと思いました」と喜びをかみしめている。

第63回カンヌ国際映画祭 コンンペ作見どころ・ストーリー

 平林監督の本業はCMディレクターで、猫が温泉地やリゾート地を旅する「じゃらん」(リクルート社)やイチロー出演の「日興コーディアル証券」などのCMを手掛けている。売れっ子の平林監督が短編を制作するようになったのは2001年から。CMで仕事をしている同じスタッフがボランティアで参加しているという。作りはじめた理由について、平林監督は「僕たちにとっては“祭”です。CMはあくまで仕事ですけど、そこに短編を作るために撮影準備をしていると、日常の裏で祭が動いているようで楽しいんです。だから映画祭に選ばれたときは毎回、大人数で参加します。今回もカンヌに20人で来ました」と言う。

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 カンヌ参加は「狙って出品しました」とキッパリ。そのため、過去のカンヌに選出された短編作品を観まくり、カンヌ好みの作品になるよう対策を練ったという。そして制作したのが、女性の胎盤を乾燥させた漢方薬「紫荷車」からタイトルを付けた『Shikasha』(原題)。

 女優・尾野真千子と、平林作品常連の俳優堀部圭亮共演で、地中に埋められた母子を捜査隊が発見するまでの10分間のドラマだ。平林監督は「カンヌの傾向として、『え? そこで終わり?』と思うような、あいまいな結末の作品が多いんです。だから今回も乱暴に説明するようなことはせず、かつ一日で撮影が終わり、約100万円の予算で収まるようにと……そこから企画を考えました。テーマは“母親の役目”。自分が日頃、3歳の子どもがいて母親の子育てする様子や虐待事件のニュースを見ていて感じたことなのですが、しつけや教育といったことよりも大切なのは“母親は子どもを死なせてはいけない”ということではないかと。そこからこのドラマが生まれました」と説明する。

 現地での公式上映は21日。しかし平林監督は上映に立ち会わずに帰国してしまう。「実は妻が第2子を妊娠中で出産予定が近いんです。どうしても、映画祭後半の21日までいられないと映画祭側に説明したら『上映なんてちっぽけな問題だろう。気にするな』と言ってくれました(笑)」。

 ちょっと残念な感じのするカンヌ初参加となったワケだが、その分、平林監督には新たな目標ができた。「次はカンヌの短編コンペティション部門に選ばれて、レッドカーペットを歩きたいですね」。その前に、9月にイタリアで行われるヴェネチア国際映画祭にも作品を出品し、今年1年で世界三大映画祭制覇を目指すという。(取材・文:中山治美)

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