低所得者が多く住むハーレム地域の学校、公立学校の生徒の成績上回る教育を施す
アメリカの教育問題に触れた話題の映画『ザ・ロッテリー / The Lottery』(原題)について、本作に描かれるハーレム・サクセス・アカデミーを設立したエバ・マスコウィッツと、その学校に通う生徒の母親ローリー・ブラウン・グッドウィンが語ってくれた。
ハーレム・サクセス・アカデミーとは、保護者、地域住民、教師、市民活動家などの希望によって、公的な資金の援助を受けて設立されるチャーター・スクールの一つ。本作は、低所得者が多く住むハーレム地域の教育水準を上げるために、ハーレム・サクセス・アカデミーの設立に奮闘した人々の姿を描いている。
創立者のエバは、「生徒と教師だけでなく、両親たちにも、もっとかかわってもらえる教育を始めようと思ったの」とハーレム・サクセス・アカデミーの設立経緯を明かす。ハーレム・サクセス・アカデミーの教師には、学校側から携帯電話が支給され、生徒の両親がいつでも教師と連絡できるというシステムをとっているという。
息子をハーレム・サクセス・アカデミーに通わせているシングルマザーのローリーは、「教師と頻繁に対話できるだけでなく、自分の息子がどういう教育を受けているかしっかり理解できるようになったわ」とその体制を高く評価する。さらにローリーは、学校に常勤の精神科医がいることを挙げ、そのシステムに感心しているようだった。また、息子も「学校が好きだ」と言っていることを明かしてくれた。
しかし、そんなハーレム・サクセス・アカデミーには、ニューヨーク市教育組合などから批判的な声も上がっているという。しかし、それはハーレム・サクセス・アカデミーのようなチャーター・スクールの生徒の成績が、公立の学校の生徒の成績よりも良い結果を出しているためのひがみでもあるそうだ。
エバが設立したハーレム・サクセス・アカデミーも、7月には全7校、生徒数2,500人の大所帯になるという。さらにエバは、10年から15年で、市内で40校の開校を目指していると明かしてくれた。自由な教育の場であるチャーター・スクールは、これからもますます拡大していくことが予想される。(取材・文:細木信宏 Nobuhiro Hosoki)