『バイオハザードIV』米と日本で1位に!深津絵里効果で『悪人』は2位!!
映画週末興行成績
話題作がロードショー公開される前に「先行上映」が行われることがある。この「先行上映」で集客した際の興収、動員数といった数字は、映画興行の世界の慣習として、公開初日の土日2日間成績にプラスで上乗せされることになっている。これはある種の数字のトリックであり、一部にはフェアじゃないという意見も確かにあるが、ヒット作が続出すれば、映画業界の活性化にもつながるわけで、ある種のご祝儀みたいなものだと考えられている。そういった点を踏まえてランキングを眺めてみると、映画会社がどのように映画をヒットさせようとしているのか。そういった裏側が垣間見えて興味深いのではないだろうか。
今週初登場で首位を獲得した『バイオハザード IV アフターライフ』でも、9月4日、5日に先行上映が行われた。先行2日間の興収は4億1,842万6,140円で、今年に行われた先行上映の記録の中では最高値。さらに全国648スクリーンで公開されたロードショー公開で、先行上映の成績を上乗せした累計5日間の成績は、動員81万3,779人、興収が13億799万240円という結果となった。この結果を見ても、先行上映をしなくても首位獲得は確実だったと思われるが、あえて先行分の数字を上乗せすることによって、作品の爆発的なスタートダッシュを印象付けることに成功している。一般的に続編ものは回を重ねるごとにジリ貧になるのが常だが、『バイオハザード』シリーズは例外で、2002年公開の1作目が最終興収23億円、2004年の2作目が27億円、2007年の3作目が28.5億円と、日本においては右肩上がりの推移を見せているのが特徴。『バイオハザード IV アフターライフ』の累計興収はすでに13億円を突破し、シリーズ最高の興収を記録するのも夢ではないだろう。主演のミラ・ジョヴォヴィッチが来日し、精力的にプロモーションを行ったことや、テレビ朝日系列の「日曜洋画劇場」では、「3週連続シリーズ完全制覇!」と題して過去3作を3週連続で放送することも本作の知名度アップに貢献したといえるだろう。
2位は映画『悪人』が初登場。全国231スクリーンでの上映は、初日2日間の動員は19万1,296人、興収は2億4,624万2,900円という結果になった。やはり深津絵里が第34回モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した熱気が冷めないうちに公開できたという運のにも恵まれたようだ。客層は、男女比34:66で女性客が多いのが特徴。年齢別に見てみると、20代が33.5%と最も多く、続いて30代が21.2%、40代が19.4%、50代が16.5%と平凡な日常を送る女性が生きる喜びを見い出していくという深津の役柄に共感できるような、大人の女性たちに支持されているようだ。シリアスな題材ながら大ヒットを記録した映画『告白』同様、製作委員会にテレビ局が入っていない映画である本作を、着実にヒットに結び付けた本作配給元・東宝の底力を感じさせる興行となった。ちなみに現在興収38億円を記録している『告白』の初日対比で98.1%(動員)、91.2%(興収)。口コミで観客層を広げた同作のようなロングラン興行となるか、興味は尽きない。
3位は映画『BECK』が先週の首位より2ランクダウンだが、9日間の累計動員は63万4,835人、興収は8億3,200万7,200円となった。そして公開4週目となる映画『ハナミズキ』は4位で2ランクダウン。累計動員は179万9,338人、累計興収は22億5,787万6,620円。続く公開9週目の映画『借りぐらしのアリエッティ』は5位で、累計動員が715万9,659人、累計興収が86億4,892万3,170円。公開10週目となる映画『トイ・ストーリー3』は6位。7位は映画『ベスト・キッド』という結果になった。
8位には映画『君が踊る、夏』が初登場。全国201館での公開で、土日2日間の動員は3万2,142人、興収4,113万6,900円の成績を上げた。客層は、男女比で男性36.3%、女性63.7%と女性が多く、年齢別では20代が30.8%、次いで30代と60代以上が16.3%と並んでおり、幅広い年齢層で観客を動員している。作品の満足度も98%と非常に高く、今後の興行にも期待がかかる。
9位は映画『劇場版メタルファイト ベイブレードVS太陽 ~灼熱の侵略者ソルブレイズ~』が3ランクダウン。10位は公開11週目となる映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』がベストテン圏内をキープしている。そして11位は映画『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』が4ランクダウンと惜しくもベストテン圏外へと落ちてしまった。
今週末に公開予定作品の中で最注目作は、やはり映画『THE LAST MESSAGE 海猿』だろう。このシリーズも1作目の最終興収が17億4,000万円、2作目が71億円と右肩上がりの興行を実現。シリーズ初の3Dというアドバンテージも追い風になるか、注目だ。その他、公開に先駆けて行われた各種関連イベントが大盛況で、熱狂的なファンが多数駆け付けることが予想される映画『劇場版 機動戦士ガンダム00 (ダブルオー) -A wakening of the Trailblazer-』や、日本の地に足を踏み入れたことのない最後のハリウッドスターといわれたジュリア・ロバーツ初来日が話題になった映画『食べて、祈って、恋をして』のランク入りにも期待したい。(ランキングなどは興行通信社調べ)(取材・文:壬生智裕)