歌舞伎の世界は“人力SFX”!『わが心の歌舞伎座』釜山でワールドプレミア!
歌舞伎座の姿をとらえた史上初のドキュメンタリー、『わが心の歌舞伎座』が第15回釜山国際映画祭(PIFF)でワールドプレミア上映され、十河壯吉監督がティーチインに出席した。
『わが心の歌舞伎座』は、16か月にわたる歌舞伎座さよなら公演が始まったのを機に、歌舞伎の神髄を映画として残そうと企画されたドキュメンタリーだ。司会者から紹介を受けた十河監督は「頭で理解しようと思わず、歌舞伎の心を感じとってもらおうと作りました」とあいさつ。その言葉に安心したのか、日本人も知っているようで知らない歌舞伎の世界について、次々に質問が飛んだ。
撮影中には「京都・嵐山の天龍寺にいらした高僧から聞いた、“一座七走(いちざしちそう)”という禅の言葉を常に意識していた」と語る十河監督。また「テレビ番組の作りかたを持ち込まないことと、歌舞伎のスタンダードを堂々と出していくこと」に心を向けたという。2時間47分もの長尺作となったのも、日本独自の“間(ま)の文化”を大切にした表れだろう。さらに「CGや3Dなどの先端技術に対して、歌舞伎の世界は“人力SFX”。人間の力で特殊効果をやっている。伝統の基本は心だと思います。人間のにおいや魂が伝わる世界も見直してほしい」と静かにアピール。父親のような監督の言葉に、若い観客たちは最後まで熱心に耳を傾けていた。
『わが心の歌舞伎座』は2011年1月15日、東劇ほか全国ロードショー。(取材・文:柴田メグミ/Megumi Shibata)