『トスカーナの贋作』ジュリエット・ビノシュ、監督と男女の関係になるところを寸止め?
第15回釜山国際映画祭(PIFF)に出品された『トスカーナの贋作』の記者会見が12日に行われ、同作でカンヌ国際映画祭女優賞に輝いたジュリエット・ビノシュ、アッバス・キアロスタミ監督が記者会見に登壇した。
出演に至る経緯について、ビノシュは「カンヌで会うたびに、遊びにおいでと監督から言われていたの。テヘランには怖いイメージがあり躊躇(ちゅうちょ)していたけど、思いきって出かけたわ。でも監督の自宅で二人きりになったとき、さすがにマズイ気がして『わたしたち、いい友人でいましょうね。男女の関係になるつもりはないの』と告げると、監督もホッとしてた。そのときに、この映画のアイデアを聞いたのよ。撮影中は、まるで夢の国にいるように幸せだったわ」と流暢な英語を操り、会場の笑いを誘った。
素人俳優を使うことで知られるキアロスタミ監督も、「彼女ほどプロフェッショナルな女優との仕事は、特別な体験だったよ」とビノシュを絶賛。相手役のオペラ歌手、ウィリアム・シメルの起用に関しては「候補の俳優がほかに3人いたんだけど、みんな年寄り過ぎると言ってジュリエットが怒ってしまってね。ウィリアム以外に選択の余地はなかったんだ」と、ユーモアを交えて明かした。
ウィットにとんだ受け答えと豊かな表情で終始、会見をわかせたビノシュ。今年を最後に勇退するPIFFの名物委員長、キム・ドンホ氏の印象を聞かれると「彼の評判はすばらしいけど、私自身はまだよく知らないの。今夜パーティがあるから、一緒に踊ってみるわ」とほほ笑んだ。
ところが、この言葉をリップサービスに終わらせないのが、大物女優ビノシュ。その夜、海辺のクラブで開催されたパーティで、70代のキム・ドンホ氏とともにイケイケのダンスを披露し、大喝采を浴びたのだ。ノリの良さと飾らない人柄に、誰もが魅了される1日となった。
“キアロスタミ式『イタリア旅行』”とも言われるラブストーリー『トスカーナの贋作』は、2011年2月、ユーロスペースにて公開される。(取材・文:柴田メグミ/Megumi Shibata)