東野圭吾作品のヒットの秘密とは?「幻夜」など次々に映像化される背景
新作を発表するごとに人気ランキングの上位をマークし、映画『白夜行』『手紙』など作品の大半が映像化され、まさに日本を代表するベストセラー作家である東野圭吾だが、彼の作品はなぜ人々の心をつかむのか。その秘密に迫った。
今や国民的作家として知られている東野は、1985年に江戸川乱歩賞を受賞した「放課後」で小説家デビューし、1999年には「秘密」が日本推理作家協会賞(長編部門)に輝き、大ブレイクを果たした。その後も、「白夜行」「手紙」「探偵ガリレオ」シリーズほか、傑作小説を次々と生み出し、2006年には「容疑者Xの献身」で第134回直木賞も受賞している。彼の作品の大半は映像化され、なかでも映画『容疑者Xの献身』は興行収入約50億円という大ヒットを記録した。
彼の作品がここまでヒットするのは、どれを読んでもハズレがないと絶賛される極上のミステリーだということが、理由の一つとして考えられる。事実、原作の映像化作品は映画だけでも12本もあり、海外でもリメイクされているほどだ。特に累計200万部の傑作ミステリー「白夜行」は、これまでにテレビドラマ化、舞台化もされている。
また、ほかとはひと味違う巧妙な人間ドラマが、東野作品が愛される秘密でもある。東野が初期に発表した、純愛ミステリー作品「変身」では、脳移植によって他人に人格を支配され、徐々に変わっていく自分を止められずに苦悩する主人公と、そんな彼をひたむきに愛する恋人との一風変わった愛の行方が描かれている。死んだ妻の人格が宿ってしまった娘と、夫婦生活を送ることになった中年男を描いた名作「秘密」も、その独特な設定とラストで明かされる衝撃の秘密が読者の心をつかんだ。
そして「白夜行」の姉妹編といわれているベストセラー「幻夜」も良質な人間ドラマが描かれた作品の一つ。自らの美ぼうとカリスマ性で男たちを意のままに操り、高みにのし上がっていく主人公の美冬の姿には、まさに人間の業や欲望が表されている。人間の「陰」を圧倒的なスケールで描くのは、東野作品ならではのノワールなのだ。
ちなみに「幻夜」はWOWOWでテレビドラマ化が決定しており、主人公の美冬を深田恭子が演じ、彼女にとって新境地となる悪女ぶりが注目されている。ほかにも堀北真希と高良健吾が共演した『白夜行』が2011年1月に公開されるなど、まだまだ話題の絶えない東野作品。今後、その圧倒的で独特な作風でどんな作品を世に送り出してくれるか期待するとともに、過去の映像化作品をもう一度チェックして東野ワールドにハマってみてはいかがだろうか。
「幻夜」はWOWOW「連続ドラマW」枠で11月21日夜10時から全8話放送(第1話は無料放送)