行定勲監督、日本映画界ダメだし!ついでに観客にもダメだし!「大量宣伝につられてしまっているのでは?」
17日、国際映画祭「第11回東京フィルメックス」開催前トークイベントが丸の内カフェにて行われ、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督が登場し、東京フィルメックスの魅力や海外の国際映画祭での思い出、現在の日本映画界への複雑な思いを語った。
第1回東京フィルメックスで監督作『贅沢な骨』がコンペティションに選出されたり、第8回目では逆にコンペティション審査員を務めたり、同映画祭と関わりが深い行定監督。当時を懐かしそうに振り返った後、「基本的に東京フィルメックスで上映される作品は全部観たいですね。ここで選ばれる作品は全部、『これが自分の作りたいものなんだ!』という作り手の思いが伝わってくるものですから。ずっと続いているのは、運営スタッフと映画作家たちがつながっている証しだと思う」などと、東京フィルメックスの魅力を熱く語った。
近年では映画『パレード』が第60回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品されたことも記憶に新しく、国際映画祭への参加経験が豊富な行定監督は、トーク中各地での思い出もたくさん披露。中でも釜山国際映画祭への思いは強いようで「僕の中では釜山映画祭を基準にしている。この映画祭はコンペがなく、純粋に僕の映画を観たい人が集まってきて『前の作品のほうが良かった』なんて言ってきたりする(笑)。まずはアジアの人に知ってもらって、それからヨーロッパで観てもらえばいい。これからはもっとアジアの人同士で手を組んで、一緒に映画を作っていくべき!」とアジアへの強い思いを明かした。
最後の観客からのQ&Aタイムでは、日本の映画界の現状について「閉塞感がある。純愛ものが当たるとほかも同じようなものを作る」と苦言を呈する場面も。さらに「僕が映画を始めたころは、誰も日本映画を観なかった。『GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』が当たって日本映画も観に行ってもらえるようになったけど、違う方向へ行ってしまったような気がする。現在は観客が大量宣伝につられてしまっているのでは」と現状に危機意識を感じている様子だった。
しかし、そんなシリアスな話題のほかにも「撮影以外のときの過ごし方は?」と聞かれると「本屋や喫茶店、TSUTAYAに行って自分の映画が借りられているかチェックします(笑)」と答えるなど気さくな面も明かす場面も多々あった。行定監督の創作スタイルや素顔をうかがい知れる内容の濃い1時間半のトークに、会場に集まった行定作品ファンたちは大満足の様子だった。
東京フィルメックスは今世界が最も注目する作品を、いち早く上映する国際映画祭。アジアの才能を発掘するコンペ部門、最先端の注目作が並ぶ特別招待作品のほか、毎年恒例の特集上映では、今年はイスラエルの巨匠アモス・ギタイ監督、50年代松竹黄金期の作品が登場する予定。
第11回東京フィルメックスは11月20日から28日まで有楽町朝日ホールほかにて開催