ナタリー・ポートマンのバレエを絶賛!ダーレン・アロノフスキー監督「彼女は1年前から練習していた」
映画『レクイエム・フォー・ドリーム』や『レスラー』で名を馳せたダーレン・アロノフスキー監督が、新作『ブラック・スワン / Black Swan』について語った。
同作は、ニューヨーク・シティ・バレエを舞台に、ベテランのバレリーナとライバルとの熾烈(しれつ)な争いが繰り広げられ、バレリーナの野望、麻薬摂取、自傷行為、レズビアン・セックスなどが描かれた作品。現在、オスカー候補と言われている主役ナタリー・ポートマンの演技にも注目だ。
まず、なぜバレエの世界を描く気になったのかとの質問に、アロノフスキー監督は「実は、僕の姉がバレエのダンサーだったんだ。僕自身は、特にくわしくバレエについては知らなかったが、どこかバレエには興味を持っていたんだよ。それと、観客は、あまり世間に知られていないような(バレエの)裏の世界に興味を持つことができるとも思ったからなんだ」と製作意図を明かし、さらに「僕が映画学校(AFI=American-Film Institute)に通っていたときに、これから制作したい映画をリストアップしていたんだけど、このバレエと前作で制作したレスラーの世界がそのリストに入っていたんだ。随分長い時間をかけながら、徐々にこの映画の脚本を構築してきたんだよ」と語った。ただ、リサーチの過程では、お姉さん(彼女は高校時代にバレエをやめていた)から助言を受けなかったそうだ。ただ、現在CBSニュースで働いているそのお姉さんは、制作者の観点でこの作品を高く評価しているそうだ。
ナタリー・ポートマンのキャスティングについて「彼女は、もともと4歳から13歳までバレエ経験があって、バレエ・ダンサーのボディを持ち合わせていたし、ジャンプなども最初からできていた。ただ実際には、本物のバレエダンサーを育成するまでには、最低でも20年くらいはかかるそうだ。そんな本物のように演じてくれという要求は、相当厳しいものだったと思う。そのためナタリーは、撮影の1年前から1日5時間の練習をこなし、撮影日が近くなったときには1日8時間の練習をしてまで調整してくれたんだ。もちろん、本物のバレエダンサーたちが観れば、欠点を見つけるかもしれないが、ここまでやり遂げた彼女のバレエのパフォーマンスに感心し、その欠点でさえ見逃すことになると思う。それくらい、素晴らしいバレエをナタリーは見せてくれた!」とナタリーを褒めちぎった。
資金繰りの苦労について「今回も、前作の『レスラー』のように製作資金を集めるのには苦労したんだ。でも、『レスラー』の評価が良かったし、今回はハリウッドのスターであるナタリー・ポートマン、世界的に有名なフランスのスター、ヴァンサン・カッセルが出演し、さらにセクシーでサイコロジカル・スリラー作品だからすぐに製作できると思っていたんだ。ところが、誰もなかなか資金を出してくれず、結果的に『レスラー』のときよりも資金調達に時間が掛かってしまった……」と述べた後に、ハリウッドでは宣伝しやすい映画しか受け入れられないと辛らつな言葉も残していた。
映画は、「白鳥の湖」の主役をかけて競争が繰り広げられるが、従来使用されるクラシック音楽ではなく、エレクトリックなサウンドを使った音楽、手持ちのカメラの撮影、そして鏡の反射などが、見事に緊張感を醸し出している作品に仕上がっている。
(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)