実在の猟奇殺人題材で18禁!園子温監督、「映画は下品なところも忘れちゃダメ!」と熱く語る!
衝撃的な過激描写でR18+指定され、早くも話題を集めている映画『冷たい熱帯魚』の鬼才・園子温監督が、世界中を熱狂させる「園ワールド」について熱く語った。
237分というほぼ4時間の上映時間が話題になった自身の監督作『愛のむきだし』ほどではないにせよ、園監督の新作である本作も146分という2時間を超える上映時間。脂の乗り切ったアーティストに共通する「まだまだ語り足りない!」という様子が画面からあふれている。「確かに、本でいえば中編が書けなくなってしまったというのはありますね。エンディングをきれいにまとめるよりは、まだやるか、というくらいに壊してしまいたいという衝動がクセになっているんですよ」と園監督が語るとおり、本作も最後まで圧倒的なテンポで一気に観せてしまうパワフルな作品。
実在の猟奇的犯罪をモチーフにした本作であるが、グロテスクで思わずあぜんとしてしまう描写もどこか笑えるようなユーモアがある。「事実は小説よりも奇なりといいますが、犯罪の記録などを調べていても、導入は確かにすごいんですけど、オチは大したことないことが多くて。だったら事実よりも小説の方をもっともっと怪しくしてやろうじゃないかと思いますよね。それこそが物語の役割だと思う」と確信を持って語る園監督。実際、ヴェネチアやロンドン、トロントなどの国際映画祭で本作が上映された際、この突き抜けたブラックジョークに会場は大盛り上がりだったという。
吹越満、でんでん、渡辺哲といった日本映画の屋台骨を支えるいぶし銀俳優たちの狂気をはらんだ演技も本作の見どころの一つだ。「日本に完全に足りないのは、オヤジ映画なんですよ。ハリウッドなら40代や50代の映画がたくさんあるのに、日本はどうなっちゃったんだろうと前々から思っていて。だから今回、画面に映るのはオヤジばっかりです(笑)」と笑う園監督。本作のキャスティングも、取りあえず有名俳優を何人か入れておけば何とかなるだろう、というものとは対極にあるともいえる。「そういう状況だと、面白い俳優が育たないと思うんですよね。いい俳優なら、これまで脇を固めていた人であっても使うべきだというようなポリシーがあるんですよね」と力強く語った。
しかし本作ではオヤジだけでなく、人間の残虐性や狂気をユーモアたっぷりに演じる黒沢あすか、神楽坂恵といった女優陣も好演。特に神楽坂は胸の谷間を強調した衣装で前かがみになるシーンが多く、オヤジだらけの劇中で一服の清涼剤的役割を果たしているが、「どんなにつまらない映画であっても、胸の谷間を見るとつい許してしまうことってあるじゃないですか(笑)。映画って堅苦しいだけでなく、そういう下品なところも忘れちゃいけないんです。頭でっかちで考えちゃだめなんですよ」と園監督は明朗に持論を展開した。
本作は『愛のむきだし』の鬼才、園子温監督による人間の狂気と愛を描いた作品。家庭不和を抱えつつ、小さな熱帯魚店を営む主人公が、想像を絶する猟奇殺人事件に巻き込まれることになる。
映画『冷たい熱帯魚』は1月29日よりテアトル新宿ほか全国順次公開