5,850円でゾンビ映画を作る方法教えます!各国の映画祭で大絶賛を受けた新進気鋭監督が語る!
製作費わずか45ポンド(約5,850円・1ポンド130円計算)という驚きの低予算で作られたゾンビ映画『コリン LOVE OF THE DEAD』。各国の映画祭で高い評価を受けている本作を手掛けたマーク・プライス監督と、コリンを演じた主演のアラステア・カートンが、創意工夫に満ちた製作の裏側を語った。
ゾンビになってしまった青年コリンが、壊滅したロンドンの街をさまよう本作。何といっても驚くのは、45ポンドという製作費の安さだが、その内訳は、エキストラをもてなすためのクッキーや紅茶、撮影に必要だった小道具、そしてロケ場所に持ってくるのを忘れてしまった撮影用ビデオテープ数本の購入費だという。しかし本作は、荒削りではあるものの、それがある種のリアリティーを生み出しており、とても超低予算で作られたとは思えない作品に仕上がっている。プライス監督は撮影で使ったという自前の家庭用ハンディカムを手にしながら、「撮影で一番大変だったのは、音なんだ。何しろ、マイクはカメラに最初から付いている感度の悪いものしかないからね。このマイクの前で、お菓子の袋をクシャクシャさせたり、のどの奥を鳴らしたりして、ゾンビの動きや、骨が砕ける音をとったんだよ」と手作り感あふれる音作りを再現してみせた。
さらに、本作にはゾンビの大群が登場するが、ゾンビを演じた多くのエキストラたちは、監督や出演者の友達が連れてきた知り合いたちや、Facebookでの呼び掛けに応じて集まった有志だといい、監督は「みんな楽しんでくれたよ。ゾンビになって暴れる経験なんてめったにできないから、それぞれがアイデアを出してくれて、どうしたらゾンビらしく見えるか考えてくれたんだ」と瞳を輝かせて語った。そこで主演のアラステアが「マークは人をその気にさせるのが本当にうまいんだ。監督の中には、作品は自分のものだと主張する人もいるけど、マークはそうじゃない。作品はみんなのものだと言って、みんなで一緒に作り上げようとしてくれるんだ。この作品が出来上がったのは、本当にマークの人柄のおかげだと思うよ」と語り、「いや、本当は裏では腕力にものを言わせてるんだけどね」とジョークもつけ加えた。
しかし、楽しそうな雰囲気が伝わる撮影とは対照的に、本作で描かれているのは、ゾンビとなってしまった者にも生前には家族や友人、恋人がおり、愛する者がゾンビとなってしまったときに、どうすべきかという苦悩と葛藤、そして、「ウォー、ウォーッ」といううめき声とも荒い息遣いともつかない鳴き声と、わずかなしぐさのみで表現されるコリンの感情だ。ゾンビに心があるかどうかはわからないが、マーク監督は「コリンに感情移入できるのは、コリンがゾンビになるところから話が始まるから。コリンが生前の記憶を宿しているのかどうか、それは人によって違う考えでいいと思っているよ」と語った。果たして、コリンに記憶はあるのか、人が人でなくなってもなお心に留めるものとは何なのか、その目で確かめてもらいたい。
映画『コリン LOVE OF THE DEAD』は3月5日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開