アカデミー賞助演男優賞にノミネートのジョン・ホークス、話題の新作『ウィンターズ・ボーン』を語る
去年のサンダンス映画祭で見事にグランプリを受賞し、今年のアカデミー賞作品賞にもノミネートされている注目の作品『ウィンターズ・ボーン(原題) / Winter's Bone』について、俳優ジョン・ホークスが語った。
同作の主人公リー(ジェニファー・ローレンス)は、ミズーリ州の貧しい田舎町で病気で全く喋れない母と幼い妹弟と暮らす17歳の少女。ある日、ドラッグの売人をしていた父が、自宅を保釈金の担保にしたまま失踪してしまい、自宅差し押さえの窮地に陥っていた。そこで彼女は、自ら父を裁判所へ出頭させるため、その行方を追って危険な裏社会へと乗り込んでいく。ジョン・ホークスは、リーの父親の失踪の真相を知るティアドロップというドラッグ中毒者を演じ、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。
これまでジョンが演じてきた役柄と比べて、今回はかなりタフなイメージの役柄であることについて「僕の場合は、他の俳優と比べて(独立系が多く)話題になった作品が少ないため、あまり他の作品のイメージが観客に植え付けられていないから、むしろタフな役は演じやすかったかもしれない。ただこのティアドロップが素晴らしいと思ったのは、メタドンの中毒者だが自己憐憫したり、問題解決をしようとしないところだ。個性的だと思ったよ。このタフな役を演じるうえで参考にした文献は、マイケル・W・クネオの『オールモスト・ミッドナイト(原題) / Almost Midnight』で、この本はこの映画と同じ地域のミズーリ州のオザーク高原を舞台にした犯罪を描き、メタドン(ドラッグ)の文化についても書かれていて、なぜあの地域に住んでいる人々が、そういう性格なのかもなんとなく理解できたんだ」と自身の役柄を語った。
また、ティアドロップを演じてみて「映画内ではティアドロップは初めは悪いイメージでしか映らないが、その後のリーへの対応によって徐々に観客もティアドロップの変化に気付くと思う。ただ僕が脚本を読んで感じたのは、確かにこのティアドロップの心の中に変化は見られるが、それまで悪い人間だったのが、リーと出会い急に良い人に変わったわけではなく、このティアドロップの人物像は同じままで、あくまで観客の認識が変わっていくのではないかと思ったんだ。そこで、自分が育ったミネソタ州やテキサス州で、たまに見ていたドラッグ中毒者のイメージをを生かしながら、キャラクターにブレのない一貫性を持った演技をしたつもりなんだ」と明かした。
映画内ではバンジョーを演奏するシーンがあるが、「実は僕はKing Stragglerというバンドでミュージシャンとしても活動していて、最近はバンドのメンバー全員が忙しくなっていて、なかなか演奏できないが、バンジョーを演奏するのにそんなに時間は掛からなかったんだ。それに、映画内でティアドロップはあまりうまくない設定で、そんなに練習する必要もなかったけれどね。もしティアドロップにうまく演奏できる才能があれば、全く違う世界にいたかもしれないね」とミュージシャンとしての顔も持つことも教えてくれた。
彼が以前に出演した映画『君と僕の虹色の世界』とは、全く別人のような存在感でこの映画をこなしている。次回作は、エリザベス・オルセンと共演している映画『マーサ・マーシー・メイ・マーリーン(原題) / Martha Marcy May Marlene』が控えている。
(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)