米映画興収低調が続く 初登場第1位の作品でも2,000万ドルに届かず -3月21日版
全米ボックスオフィス考
映画『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』で一躍脚光を浴び始めたブラッドリー・クーパー主演映画『リミットレス(原題)/Limitless』が1,891万ドル(16億735万円)の収益を上げて全米ナンバーワンとなった。(1ドル85円計算)
2,756館・推定3,200スクリーンで公開され、非常に高い視聴率をはじき出すスーパーボウルにて何回もCMを流したというのに、デビュー週末の興行成績は先ごろ公開された同種ジャンルのリーアム・ニーソン主演の映画『アンノウン』や、マット・デイモン主演の映画『アジャストメント』にも劣る成績。ブラッドリー初の大型主演作品ということを考えれば、あまり悪くない成績なのだが勢いに欠ける。ちなみに、本作の配給を担当するレラティビティー・メディアが行った観客調査によると観に来ていた52パーセントが女性、全体の60パーセントが25歳以上の観客であったと発表している。
第2位は、先週に引き続き映画『ランゴ』で1,508万ドル(約12億8,180万円)。春休みシーズンとなり子どもたちが映画館に足を運び始めたため、落下度も比較的少ない33.3パーセントと好調な公開3週目である。ちなみにこの作品は、封切り後17日目にして9,234万ドル(約78億4,890万円)の収益を上げている。
第3位は、先週のトップから59.1パーセントも急降下してしまった映画『世界侵略:ロサンゼルス決戦』で1,454万ドル(約12億3,590万円)。ここ数年間に公開された同種ジャンル作品の封切り後同時期成績と比べると、全米で去年冬に公開された映画『スカイライン-征服-』よりは上を行く成績だが、アカデミー賞候補にもなった映画『第9地区』や、実話を基にした映画『ブラックホーク・ダウン』の成績には届いていない。
第4位は、初登場でマシュー・マコノヒー主演の映画『ザ・リンカーン・ロイヤー(原題)/The Lincoln Lawyer』で1,321万ドル(約11億2,285万円)。2,707館・3,000スクリーンで公開されたこの作品は、マシュー主演のラブコメかアクション以外のジャンルにおいては、映画『評決のとき』以来の好成績を記録している。だが、ベストセラーの映画化作品であることや今はやりのグルーポンがこの作品に限り格安鑑賞券を発売したりしているにもかかわらずデビュー第4位というのは、イマひとつさえない成績。これは、スタジオ側が打ち出した焦点のボヤけたPR作戦のせいであると界隈ではうわさされている。
ちなみに今回、グルーポンが『ザ・リンカーン・ロイヤー(原題)/The Lincoln Lawyer』に限り格安鑑賞券を発売したという新しい試みは、業界で注目を集めている。近年、映画の入場料は1人あたり10ドル(約850円)から15ドル(約1,275円)と高騰しており客足が遠のく理由にもなっている。『ザ・リンカーン・ロイヤー(原題)/The Lincoln Lawyer』の配給元のライオンズ・ゲートによると、グルーポンがさばいた格安鑑賞券の数は約19万枚で、そのうち今週末に使用された鑑賞券の数は4万枚であったという統計が発表されている。同社がグルーポンで鑑賞券を購入した消費者に行ったアンケート調査によると、89パーセントの人たちがグルーポンの格安鑑賞券がなければこの映画を観に行かなかったであろうと答えており、新作が出るたびにPR作戦で四苦八苦する配給会社にとってこのリサーチ結果は非常に興味深いものとなっている。なお、『ザ・リンカーン・ロイヤー(原題)/The Lincoln Lawyer』を週末観に来ていた観客層は、63パーセントが女性で、85パーセントが25歳以上の観客であったと発表されている。
今週のトップ5最後を飾るのは、こちらも初登場の映画『ポール(原題)/Paul』で1,304万ドル(約11億840万円)の収益。アメリカの人気コメディー俳優セス・ローゲンが宇宙人ポールの声を担当、主役の2人組は映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』などで有名なイギリス人コンビ、サイモン・ペッグとニック・フロストである。この2人は脚本も担当しており、自らのオタク度を生かして映画『スター・ウォーズ』『E.T.』など、往年のSF映画のパロディーを随所にさりげなくちりばめており、映画オタクたちにとってはたまらない作品となっている。
さて、来週のチャート予想に移るが、上位入りしそうな新作は2本。まず1本目は映画『エンジェル ウォーズ』。映画『300 <スリーハンドレッド>』で大成功を収め、映画ファンのみならずコミックファンにも人気のザック・スナイダー監督のアクション・ファンタジー作品で、かわいい女優たちがセクシーなコスチュームに身を包みすごい武器を使って悪をぶちのめすというオタクファンたちが泣いて喜びそうな作品である。
2作目は、子どもたち(とその親たち)でにぎわいそうな映画『ダイアリー・オブ・ア・ウィンピー・キッド:ロドリック・ルールズ(原題)/Diary of a Wimpy Kid:Rodrick Rules』。欧米で子どもたちに人気のイラスト付き小説を実写で映画化したシリーズの第2作目。柳の下の2匹目のドジョウを狙う。
今週は金曜日の初公開初日時点では好調なすべり出しを切った新作が3本あったにもかかわらず、月曜に発表された全米総合興行収入の額は去年同時期に比べて10パーセントダウンで全米ボックスオフィスはまたもや低迷状態を記録。ハリウッド界隈で一般映画ファンのボヤキを聞くと、「とにかく最近のアメリカ映画はつまらない」という意見も多い。この状況を打破してくれそうな作品を必要とする現在の全米ボックスオフィスだが、果たしてそれはいつになるのであろうか? (文・取材:明美・トスト/Akemi Tosto)