映画を捨てないで!小津安二郎、溝口健二らの戦前作品のオリジナルフィルムが残っていない現状…デジタルでなくフィルムで映画を残す意味とは
映画のオリジナルフィルムを文化遺産として収集・記録・保存・修復する「フィルムアーキヴィスト」を追ったテレビ「ノンフィクションW 映画を捨てないで~戦うフィルムアーキヴィスト」が4月25日にWOWOWにて放送される。聞き慣れない職業ながら、その活動と意義については映画ファンならばぜひとも知っておきたいはず。番組では、小津安二郎監督、溝口健二監督といった世界的評価の高い巨匠による戦前作品のオリジナルフィルムが残っていないという日本映画界の意外な現状も紹介されている。
本番組では、FIAF(国際フィルム・アーカイヴ連盟)でアジア人としては初めて会長に就任した、日本のフィルムアーカイヴ活動の第一人者・岡島尚志氏の活動に迫る一方で、今年3月に完成した東京国立近代美術館フィルムセンターの新保存庫や同センターに保存されている明治~昭和初期の貴重なフィルムの数々を紹介。実際のフィルム修復の様子もとらえることによって、ハリウッドでもデジタルシネマ移行が進んでいる現在になぜ、映画をフィルムで保存する必要があるのかをわかりやすく解説している。
おびただしい数の映画が製作・上映されている現在の日本においては、映画のオリジナルフィルムよりも、DVDやブルーレイといったデジタルメディアで保存した方がいいのではないかという意見もあるかもしれない。だが、一時期隆盛したVHSが現在では顧みられることが少なくなったように、最新技術によるメディアの進化は、古いメディアが再生不可能になるかもしれない危険性とも隣り合わせ。その点、映写機さえあれば手軽に映画を再生できるフィルムのアナログ保存は、実はコスト面からいっても効率的だというのは映画ファンにとっても意外な事実だろう。保存や上映、修復といったことにまつわるフィルムアーキヴィストの苦悩にもスポットを当てることによって、日本フィルムアーカイヴ活動の現状に迫っている。
岡島氏が草案を書いたFIAFのマニフェスト「映画を捨てないで」には、小津安二郎監督、溝口健二監督といった巨匠による多くの戦前作品のフィルムが残っていないという日本映画界の現実が鋭く指摘されている。時代は確実にフィルムを使用しないデジタルシネマに移行しつつある現在。ハリウッドで映像改革を叫ぶジェームズ・キャメロン監督やピーター・ジャクソン監督はすでにフィルムを用いないデジタルシネマを採用している。だからこそ、ただ最新技術に飛びつくのではなく、アナログフィルムの利点と欠点を知った上で、デジタルかアナログかの選択をくだしてほしい。普段はなかなか日の目を見ることのないフィルムアーキヴィストの活動に迫った本番組は、そんなメッセージを問い掛けてくるはずだ。(編集部・福田麗)
「ノンフィクションW 映画を捨てないで~戦うフィルムアーキヴィスト」は4月25日夜10時よりWOWOWにて放送