原田芳雄、伝統芸能の村歌舞伎をモチーフにした念願の作品をアピール
4日、南アルプスを臨む山村の大鹿村で300年以上続く伝統芸能の村歌舞伎を軸にして、村人たちの悲喜こもごもを描いた映画『大鹿村騒動記』の完成披露上映と舞台あいさつがロケの行われた同村であり、出演の原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、阪本順治監督が登壇して山深く自然の残る大鹿村でのロケについて語った。
劇中とはうってかわって、ニット帽にジーンズとファッショナブルな出で立ちであらわれた原田。かつてテレビドラマの撮影で訪れた大鹿村に魅せられ盟友の阪本監督とタッグを組んで製作したことについて、「この村の歌舞伎を観て素晴らしいと思い、これをモチーフに映画が撮れたらいいなと考えていました。監督にお願いしたら、まさかこういう物語があったのか」と満足顔。歌舞伎では頼朝と戦う景清という役柄を演じ、演目についても熱く語る原田だったが、「本物の歌舞伎に比べると、わたしのは付け焼刃だった」と謙遜するシーンも。
監督の阪本は、「話を聞き撮影しました。今の世の中、不安や苦しい状態にありますが、この映画の美しい大鹿村を観れば色んなところでホッとする。今の日本人の心に大切なものがこの村にはあると思っています」と大鹿村を絶賛しつつ、映画をアピールしていた。続けて原田は映画を観終わった多くの村民たちを前に、「大鹿村のみなさんのおかげです」とエキストラなど製作で協力してもらったことに感謝の意を述べ、登壇者全員で頭を下げた。最後に原田はスペシャルゲストとして登壇した大鹿村の本物の歌舞伎役者と共に大見えを切り会場を沸かせるなどした。
一方、原田の18年ぶりに再会した妻役の大楠は、脳の疾患で記憶をなくしつつある難役さながらに、「質問はなんでしたっけ」ととぼけるそぶりをみせ会場の笑いを誘っていた。
上映あいさつ終了後、劇中に登場する「ディア・イーター」という鹿肉料理店のセットの前でマスコミ取材があり、撮影から半年ぶりに訪れた同地について原田は、「撮影は秋でしたが今は春。ここは桜より桃の花がすごいね。地の勢いを改めて感じた」とコメントした。
大鹿歌舞伎は庶民の娯楽として大鹿村に300年以上続いている地芝居。神社の境内にゴザを敷き、舞台と客席が一体となる古来の観劇スタイルを守っている。地芝居としては全国初の国選択無形民俗文化財に指定され、ヨーロッパ各国などで公演の実績もある。毎年春と秋2回の定期公演が村内に残る廻り舞台において上演され、全国から多くのファンが訪れる。入場は無料。
本作は長野県の素朴な山村、大鹿村で鹿肉料理店を営みながら歌舞伎の主役を演じる風祭善(原田)のもとに18年ぶりに妻の貴子(大楠)が駆け落ち相手の治(岸部)と共に村に戻ってくることに端を発して起こる騒動を描く悲喜劇。村の伝統芸能でもある大鹿歌舞伎の舞台と絡め、南信州の美しい自然とどこにでもありそうな素朴な村の風景と共に村民たちのドラマを描いた意欲作。松たか子、佐藤浩市、三國連太郎など主役級俳優たちが脇を固めるのも見どころ。(取材・文、池田敬輔)
映画『大鹿村騒動記』は7月16日より全国公開