浅野忠信ハリウッドデビュー作『マイティ・ソー』失笑か絶賛か?製作費120億円の超大作、漂うB級感をA級に昇華
コミックヒーローの映画化は、ともするとコッケイに見えてしまうという大きな落とし穴がある。全米夏の大作シーズンの幕開けを飾る映画『マイティ・ソー』もその落とし穴にはまりかねないと言われており、公開後に招かざる“失笑”から超大作を守るために製作チームが経験した苦労話が公開されて話題を呼んでいる。
黄金の鎧に深紅のケープをまといブロンドの長髪をなびかせつつ金槌(ハンマー)を使って空を飛び敵と戦い、なおかつお上品なクイーンズ・イングリッシュを話すマッチョな英雄……。マンガで見るには違和感がないかもしれないが大スクリーンに実写で登場するとなると、知らない人が見たら失笑を買う可能性も大だ。よって製作費1億5,000万ドル(約120億円 1ドル=80円で計算)という巨額をかけたこの超大作がお笑いのネタにならないように、製作・配給のパラマウント映画は躍起になったわけである。
現在までに600万部も出版されている人気コミック「マイティ・ソー」を知り尽くしているファンならまだしも、映画で初めてソーを知る人たちも少なくない。コミック・ファンにとっては、ソーが口走る“クサい”けど“カッコいい”セリフやシーンも、一般映画ファンにとってはただの“クサい”になりかねない。人気コミックの映画化に際し、いかにして違和感なく新しいファンに『マイティ・ソー』の世界に入ってきてもらうか……。
まずパラマウント映画が、製作の要である監督に起用したのがケネス・ブラナーだった。有名英国俳優でもあり、数々の時代物、そしてシェイクスピア劇をこなしてきているブラナー監督は、キャラクターのしゃべり方はもちろん映画内で時空を飛び越えるために使用される地球儀のようなマシーンも考案するなどクリエイティブ面のブレインとして大活躍。
この他にも製作チームは、とにかくソーを“笑いものにするべからず!”というミッションを背負い、デザイン面でも細心の注意を注ぎ込んだ。めぼしいところではソーのコスチュームは実写用には少々ハデ過ぎるということで本来袖なしのものが、もう少し王家の品格にふさわしい腕を覆ったデザインに手直しされた。ソーのトレードマークとなっている羽の付いたヘルメットも、コミックではいつもかぶっているものなのだが、映画ではコッケイに見える可能性があることで王位継承式のときのみにかぶるものとした。また、見たくれはもとよりストーリー内容がしっかりしていればコワいものはない、ということでコミックの原作をふまえつつも、王座を狙った肉親同士の葛藤と戦い、そして父子の確執など人間ドラマに重点を置き、観客が共感できるストーリー内容を固めていったという。
映画『マイティ・ソー』は、オーストラリアをはじめとする海外数か国では4月21日より先行ロードショーされており、すでに1億2,500万ドル(100億円)を叩き出しているが、作品の甲乙は本国アメリカでの成績にかかっている。ソーをはじめ、アイアンマンや超人ハルク、キャプテン・アメリカ(=映画『キャプテン・アメリカ』は全米で今夏公開予定)、というマーベル・コミックのヒーローたちを一堂に会した映画『ザ・アベンジャーズ』も2012年公開に予定されており、製作・配給であるパラマウント映画の運命は今週のソーの成績にかかっているといっても過言ではない。映画『マイティ・ソー』の週末全米興収に注目が集まる。(文・取材L.A.:明美・トスト/Akemi Tosto)