「はやぶさ」への熱い思い…ドキュメンタリー製作の監督が吐露「自分の身を焼きながらカプセルを地球に落とす姿に感動」
10日、世界初の偉業を成し遂げ大気圏に散った小惑星探査機はやぶさの軌跡を追ったCGドキュメンタリー映画『はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH』の完成披露試写会がワーナー・マイカル・シネマズみなとみらいにて行われ、監督の上坂浩光と共にJAXA(宇宙航空研究開発機構)公認の1/8サイズの「はやぶさ」のレプリカが登場。トークショーの後にはQ&Aも行われ、予定時間を延長した熱い話が繰り広げられた。
映画『はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH』場面写真
本作は世界で初めて月以外の天体からサンプルの採取に成功した小惑星探査機はやぶさの、7年間・総移動距離60億キロメートルに及んだ旅の軌跡を追ったドキュメンタリー。はやぶさが2003年5月に打ち上げられ、通信の途絶やエンジンの異常停止など、数々のトラブルに見舞われながらも、小惑星「イトカワ」の微粒子を採取して地球に帰還する姿に迫った感動作だ。
元々はプラネタリウム用に製作されたものを劇場用として作り直したというこの映画。この日上坂監督が「(本作を)プラネタリウムで観たことがある人いますか?」と客席に問いかけると、ほぼ全員がプラネタリウムで鑑賞済という熱い歓迎ぶり。
そしてその後のトークショーでは、上坂監督のはやぶさに対する熱い思いが語られた。はやぶさが役目を終えて大気圏に突入する瞬間には、はるばるオーストラリアまで見に行ったという監督は、「小さな星みたいな光が地平線の低いところに現われて、みるみる大きくなっていきました。2回ほどものすごく強い光と共に爆発して、その光で僕らの影が地面に映るらいでした」と感動しきり。さらに「一個一個の部品がバラバラになるのが分かるんです。見ているうちに光の混沌とした中から、一つはっきりとした光が飛び出してくるんです。それが(サンプルを収めた)カプセルでした。自分の身を焼きながらカプセルを地球に落とす姿に感動しました」とはやぶさが燃え尽きた時の、神々しい状況を熱く語った。
上坂監督は、この大気圏突入のシーンが、作品の中でも特に思い入れがあるといい、「人でいえば死ぬ瞬間。見たくないと思う人もいるかもしれませんが、あのカットをみんなで観てあげることによって、はやぶさのためになると思いました」と静かに語り、本作がただのドキュメンタリーではなく、ドラマ性も込めた作品であることを明かしていた。
その後は観客参加のQ&Aも行われ、客席にいた小学生の男の子から「子どものころから宇宙は好きだったんですか?」と質問されると「大好きでした」と優しく返答した上坂監督。「夜空を見上げると無限の広さを感じると言うか、そこに僕らが浮いていて、地球の表面に生きている気がして大好きです」と語りかけ、宇宙への尽きない思いを明かしていた。(取材・文:中村好伸)
映画『はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH』は5月14日より全国公開