松本人志監督の映画史に残るギャンブルなキャスティング!素人のおっさん野見隆明が見せる奇跡のラストシーンとは!?
松本人志監督作品の3作目となる、完全オリジナルストーリーの時代劇『さや侍』で無名の“おっさん”を、主演俳優に抜てきした松本が、映画史に残るギャンブルなキャスティングを振り返った。
映画『大日本人』『しんぼる』と、これまで自ら主演を務めてきた松本が、主役の座を明け渡したのは、なんとフジテレビの人気テレビ番組「働くおっさん人形」でコアなファン層から人気を集めた“おっさん”野見隆明だ。「働くおっさん人形」は、2002年より日曜日の早朝5時35分から放送されていた番組で、松本がどこからともなくやってきた素人の“おっさん”を別室のモニターを通してインタビューしていくという内容。同番組が2006年に「働くおっさん劇場」として生まれ変わった後も出演を続けていた野見は、番組に登場したおっさんの中でもずば抜けて異彩を放っていたという。
そんな野見を、今回主演に大抜てきした松本だが、野見には松本監督の映画であることはもちろん、映画の撮影であることさえも知らせないまま撮影を進めたことを明かす。松本は、その理由を「あの人って、すごく難しい人で、ある程度の緊張感を持たせておかないと、ダラダラになっちゃうような人なんですよ。だから、僕は隠れながら撮っていました」と語ったが、実際隠れてモニターを観ながら、助監督を通して演出をしていたそうだ。もちろん、結果的にはばれてしまったが、松本監督は、「たぶんばれるまでの前半は、本人も何が行われているかわかっていないでしょうね」と笑う。だが、「僕が直接言うと、急に緊張したりするので……」とばれてもなお、助監督が仲介役となっての演出を続けなければならなかったことを明かした。
撮影中、最も困ったこととして、松本は「現場には、食べ物がいっぱいあるので、よっぽど普段よりエエ暮らしやったんでしょうね。困ったことに、映画の撮影していた3か月くらいのあいだに結構太ってきやがって(笑)!」と主演男優のダイエットにかなり苦戦したことを挙げた。松本を四苦八苦させた野見は、現在、吉本興業の社屋で用務員として働いているという。お庭に畑を作り、つつましく働いているそうだ。
聞けば聞くほど、ギャンブルなキャスティングに思えてくる野見の大抜てきだが、この“問題俳優”が、撮影終盤に大化けしたという。「ただおもろいシーンになるのか、感動的なシーンになるのかはわからなかったけど、実際にやってみたら、こんなふうに、このおっさん頑張るんやっていうのがわかったんです」と松本は振り返る。ただ言われたことを一生懸命に頑張り続ける野見の姿にエキストラまでもが心を打たれ、最後にはスタッフからも泣き声が漏れたそうだ。野見隆明の笑顔を見ていると、おかしくて、なぜかかなしい。笑いとなるか、感動になるか……。撮ってみなければわからなかったという松本監督の挑戦を、ぜひ受けてみてほしい!(編集部・森田真帆)
映画『さや侍』は6月11日全国公開