温家宝総理、『おくりびと』を観て感銘!日中映画祭を開催!宮城県気仙沼市のかつての姿を収めた映画『春との旅』が北京で上映
東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市の、かつての姿をフィルムで収めた最期の映画『春との旅』が、6月8日に中国・北京で開幕する「日中映像交流事業『映画、テレビ週間』『アニメ・フェスティバル』」(主催:在中国日本国大使館、外務省、経済産業省、総務省、文化庁など)のオープニング作品として上映されることがこのほど、発表された。
同イベントは温家宝・中国国務院総理の提案によって実現したもの。温家宝総理は、昨年5月の日中首脳会談で来日する直前に映画『おくりびと』を観て感銘を受けたようで、国民間の相互理解を深めるためにも日中映画祭を開催したいと、鳩山由紀夫前総理に伝えたという。その後、政府間で実施について合意し、実現の運びとなった。
映画祭は北京と上海の2都市で開催され、北京では山田洋次監督『母べえ』の上映のほか、中国映画資料館で山田監督の特集上映も行われる。また6月12日に開幕する上海会場では、昨年度の映画賞を総ナメにした『悪人』がオープニング作品に選ばれ、李相日監督や主演の妻夫木聡も現地入りする予定だ。
同時に、東日本大震災の影響を鑑み、映画祭で中国からエールを送ろうという機運が高まったようだ。被災した地域の、本来の美しい景色をパネルなどで紹介する被災地支援ブースの設置のほか、『春との旅』の上映を決めたという。
同作品は、老後問題を抱えた祖父と孫が、祖父の姉弟の家を訪ね歩くロードムービーで、2009年春に気仙沼市や大崎市の鳴子温泉、そして仙台市でロケを実施。製作に携わった地元関係者の無事は確認されたが、ロケで使用した場所のほとんどが地震と津波の被害に遭ったという。小林監督は映画『ええじゃないか、ニッポン宮城編~気仙沼伝説』(2006年製作未公開)で同地を訪れて以来、街と地元の人たちに魅了されて同市唐桑町に別宅を購入。その後、映画『ワカラナイ』も同地を舞台に撮影と、計3作を撮り上げているだけに、第二の故郷の惨状にいまだ心の整理がつかないようだ。
小林監督は「今回、中国の方たちに観てもらえるのは非常に有り難いと思ってます。でも今、『春との旅』を持って海外の映画祭にも参加していますが、自分ではあまり観たいと思わないんですよね」と複雑な胸のうちを明かす。しかし被災地の、かつての姿を観たいという要望は中国だけでなく、被災者からも数多く寄せられているようだ。
小林監督も「被災地の方々がいつ、元の生活を取り戻せるか分からない現時点で、映画を見せるのは早いかなぁと思っているんです。『春との旅』も明るい内容ではないですからね。でも、被災地の方々が望むのであれば」と上映会の開催を前向きに検討しているという。
北京での上映には、小林監督をはじめ主演の仲代達矢と徳永えりも駆けつける予定だが、作品を通してだけでなく、こうした震災に対する日本人の今の気持ちも中国の方たちに伝えてくれそうだ。 (取材・文:中山治美)
「日中映像交流事業『映画、テレビ週間』『アニメ・フェスティバル』」は6月8日~17日、中国・北京と上海で開催。