東山紀之、主演作キャンペーンで震災の被災地を回り「勇気をもらいました」
7日、映画『小川の辺』の完成記者会見が東京国際フォーラムにて行われ、主演の東山紀之、勝地涼、片岡愛之助、松原智恵子、藤竜也、篠原哲雄監督が出席。現在、東日本大震災の被災地を含む東北をはじめ、日本各地を回って今作のプロモーションを行っている主演の東山は「僕らで何ができるか考えて、回らせてもらうことにしました。実際に(被災地の)皆さんとお会いすると明るくて、僕ら自身も勇気をもらいました。この映画を観て、日本人の矜恃(きょうじ)、美しさ、力強さを感じていただければ」と真摯(しんし)な表情で作品をアピールした。
ここ数年、映画『花のあと』『必死剣 鳥刺し』ほか多くの作品が映画化されている藤沢周平の短編小説が原作の本作。藩から上意討ちの命を受け、妹の夫を斬らなくてはならない主人公・戌井朔之助を東山が演じるほか、妹・田鶴役を時代劇初挑戦となる菊地凛子、田鶴の夫である佐久間森衛役を片岡が務めている。日本の原風景が残る山形県各地でロケを敢行し、美しい自然も映画の見どころのひとつ。公開を間近に控えた現在は、チャリティー上映会を積極的に行っているほか、全国各地で行うすべての上映会・試写会に募金箱を設置し、集まったお金は上映会の収益と共に全額を朝日新聞厚生文化事業団を通して、義援金として被災地へ送られる。
社会的立場と肉親の情の板挟みで苦しむ主人公を演じた東山は「心のあり方、どう生きるかを演じるうえで教わることができた。自分の生き様の中に取り込んでいけたら」と今作への出演が実り多い経験だったこと明かした。初共演で、東山の妹を演じたヒロインの菊地については「共演する前は(菊地の出演作の)『バベル』が強烈な印象で、エキセントリックなイメージを持っていましたけど、実際はきちっとした、すてきな女優さんでしたね。撮影中、僕の誕生日に『東山さん、誕生日、イェイ!』と声をかけてくれて、僕も思わずちょんまげ姿のまま『イェイ!』と返しました(笑)」と国際派女優との意外なエピソードを明かしてマスコミ陣を笑わせた。
また、朔之助に仕える若党で、田鶴に思いを寄せる新蔵を演じた勝地は「日本は大変なときですが、この映画から、人が人を思いやる気持ちが皆さんに伝わればいいなと思っています」と初々しくコメント。記者から「東山さんはストイックなイメージですが、実際に接した印象は?」と聞かれた際、隣の東山から「勝地君、(言うべきことは)わかっているよね?」とプレッシャーをかけられると勝地は「ストイックな部分もありますけど……飲みに連れていってもらったときは勉強になるお話をたくさんしていただきました」とドギマギしながら返答。そのほかもたびたび東山からいじられて周囲の笑顔を誘い、東山と2人でムードメーカーとして会場を盛り上げていた。
『小川の辺』は藤沢周平の著書「海坂藩大全」「闇の穴」に所収されている同名短編小説を原作に、東山紀之とは映画『山桜』以来2度目のタッグとなる篠原哲雄監督が、製作陣と共に映画化を切望して実現した感動作。侍社会のおきてに翻弄(ほんろう)される兄妹の運命を描く。そのほかのキャストに尾野真千子、笹野高史、西岡徳馬などが顔をそろえている。(古河優)
映画『小川の辺』は6月18日山形先行公開、7月2日より全国公開