五木寛之、電子書籍に寄せる期待!「読者のニーズに合わせ提供したい」 「青春の門」などを含む電子書籍「作家の個人全集」配信スタート
14日、アプリにおける電子書籍初の「作家の個人全集」となる「五木寛之ノベリスク」配信スタート記者会見が文京区・講談社内にて行われ、五木寛之と講談社・社長の野間省伸氏が出席し、7月に開始予定の「五木寛之ノベリスク」をiPad、iPhoneに配信・販売を行うことを発表した。合わせて、講談社による今後の電子書籍に対する取り組みを表明した。
小説現代新人賞を受賞したデビュー作の「さらばモスクワ愚連隊」(1966)以来、直木賞受賞作の「蒼ざめた馬を見よ」(1967)、吉川英治賞受賞作の「青春の門」(1976)など、数々の名作を世に送り出してきた巨匠・五木寛之の電子書籍個人全集の配信決定に、多くの報道陣が関心を寄せ出席した。
集まった多くの記者を見た五木は、「東電の夏対策の会見みたいだ」と冗談で会場をなごませた後、電子書籍配信について自身の夢を語るなど熱いコメントを展開。電子書籍へ関心を持ったのは早かったいう五木は、自身が慎重な性格であることを明かしてから「興味もあるが、批判もあるという立場で今日は出席した」と複雑な心境も吐露した。
その後五木は、電気書籍の役割について3つの独自の見解を展開。ひとつ目は、新しいメディアに対する期待。2つ目に、図書館のような膨大な資料を手軽に持ち歩くことが出来ることをあげた。キャリーバックにたくさんの資料を入れ、旅先で作品を書くという遊牧民タイプの五木にとって荷物が軽減できることは大きな価値があるという。そして最後には、書籍の電気化が進むことで、自分も含め、レアな作品、マイナーな作品にも光を当てることが出来ることに期待を持っていると語った。短編の中でも愛着があり、読者に読んで欲しいと思う作品が消えていくことを憂いているという。
また、「読者のニーズに合わせ、読みたいものを提供したい」という五木は、今回の電子書籍配信については「光栄ではあるけれど、ある意味捨石になるのでは……という気もしている」と苦笑しながら本音を漏らす場面も。ただ、野間氏は、紙と電子は必ずしも競合するとは考えていない。というのは、67万部を誇る「親鸞」(2010)の上巻を5月から6月にかけてウェブ上で無料公開したところ、単行本の売り上げが125パーセントに伸長したという。今回五木の初期の作品を電子書籍として配信することで紙と電子の相乗効果が出ると考えていることを明かし、「一年後にはすべての書籍を新刊も電子書籍化したい」と熱い希望コメントをした。
この日は数台のデモ機が用意されており、記者たちが興味深そうに手に取っていた。五木ファンにとっても、初期作品から電子書籍でもう一度読む環境が整い、五木氏の思い入れのある作品をたっぷりと満喫することができる。「青春の門」「親鸞」など数々の名作を、電子書籍として配信するということで、大きな話題を呼びそうだ。(福住佐知子)
アプリ「五木寛之ノベリスク」は6月末から7月初めごろに配信開始予定