AV業界の裏を描いた『名前のない女たち』、モスクワ国際映画祭で正式上映
過激なアダルト企画のために使われ、捨てられていく「企画女優」と呼ばれる女性たちの視線から、アダルトビデオ(AV)業界の裏側を描いた映画『名前のない女たち』が、6月23日より開催される第33回モスクワ国際映画祭で正式上映される。今後も北米プレミアなどが決定している本作は、佐藤寿保監督にとって、初めての世界四大映画祭での上映作品となる。
昨年9月に公開された本作は、日雇いでセックスを売る「企画女優」と呼ばれる女性たちの実情を描いたセンセーショナルな作品。今回、正式上映されることが決まったのは、カンヌ、ベルリン、ヴェネチアと並んで世界四大映画祭と呼ばれることもあるモスクワ国際映画祭のアウト・オブ・コンペ部門であり、同部門では、大島渚監督の『愛のコリーダ』や新藤兼人監督の『鬼婆』といった3本の日本作品も上映される。ピンク映画を中心に活動してきた佐藤監督にとっては、今回が世界四大映画祭での初上映となる。
これまでにもイギリス、ドイツの映画祭で正式上映された本作は、モスクワ国際映画祭の後には、アメリカで開催される第10回ニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバル(NYAFF)で北米プレミアを迎える予定。今年のNYAFFでは、三池崇史監督の映画『忍たま乱太郎』が目玉として注目が集まっているが、今や世界中にファンを持つジャパニーズ・ポルノの実情をせきららに描いた本作も大きな注目を浴びることは間違いない。本作が海外の観客にどのような印象を与えるかが気になるところだ。
企画女優という珍しい題材に目が引かれがちではあるものの、本作はAV業界を背景にした女の子たちの友情を描いた作品でもある。ただお金欲しさに足を踏み入れるのではなく、いじめなどさまざまな問題を抱える女の子たちが行き着く場所としてAV業界を描いた本作は、多くの人の目に新鮮に映るはず。AVがテーマというので敬遠するのではなく、AV女優たちも普通の女の子であるということを知るためにも、ぜひ観てもらいたい作品となっている。(編集部・福田麗)
DVD『名前のない女たち』は発売中 価格: 3,990円(税込み)