植樹活動を行う女優・竹下景子と日本の「木を植えた男」がトーク!「木は育つけど、人間は育たないね」
15日、神保町シアターで上映中の「フレデリック・バックの映画」公開記念トークショーが開催され、女優の竹下景子、NPO法人「ドングリの会」およびオークヴィレッジ代表の稲本正氏、そして三鷹の森ジブリ美術館の中島清文館長が登壇し、植樹について語り合った。
神保町シアターで絶賛上映中の特集上映「フレデリック・バックの映画」は、アニメーション界の至宝であるフレデリック・バックの代表作『木を植えた男』『大いなる河の流れ』『クラック!』『トゥ・リエン』という4本を上映するプログラムであり、連日盛況となっている。中でも1981年のアカデミー賞受賞作『クラック!』は、一脚のロッキングチェアが辿る運命を通じて、失われつつあるケベックの伝統的な生活や文化、家族愛、自然への共感、現代文明批判などをユーモラスに描いた作品となっており、東京都現代美術館で開催中の「フレデリック・バック展」と、本上映会の会場となる神保町シアターでは劇中に登場するロッキングチェアが展示されている。
これは、バック自らが描いた図面を基に、飛騨高山に創設された工芸村「オークヴィレッジ」代表の稲本氏が作成したもの。稲本氏は「日曜にここ(の劇場)に来たときに感激したんです。(観客の)子どもたちが映画館を出て、一目散にロッキングチェアに向かったんですよ。バックさんは子どもの心理がよく分かっているなと思いました。東京都現代美術館で(展示されているロッキングチェア)は座れないけど、こちらでは座れるので、是非とも座り心地を確かめに来てほしいですね」と今回の展示品に自信を見せていた。
37年間、飛騨高山で木を植え続け、フレデリック・バックとも親交があるという稲本氏はまさに「日本の木を植える男」である。そんな稲本氏から観たバック像とは「絵ばかり描いている人なのかと思っていたけど、この人の森の絵を観ると、木こりをやっていた人だな思いましたね。聞いてみると、やっぱりカナダに来たばかりのころは仕事がなくて、木こりをやっていたんだって。苦労している人にしか描けないものを描いているよね」とのこと。
幅広い社会活動を行っている竹下は、テレビドラマ「北の国から」の脚本家・倉本聰が主宰する「富良野塾」で植樹活動を行っているという。「植樹をした個所に、あくる年に行くと、ものすごく伸びているんですよね。もちろん植樹した木がすべて育つわけではないんですが、それでも案外育つものなんです」と感心した様子を見せると、稲本氏もその意見に同意する。「(自分の植樹活動は)山あり谷ありですね。飛騨高山も、最初は木がなかったけど、今は思った以上に育つの。でも人間は育たないね。おれ自身も含めて育ってないなと、反省しきりですね」と哲学的なコメントを発した。
稲本氏率いるオークヴィレッジでは、東日本大震災で被害を受けた、東北地方に木を植えようと活動を始めている。「いい母樹の子どもはやっぱり強い木になるのよ。美人の子は美人になるの、1歳からきれいな紅葉になるからね。だからいい母樹を探して、東北に植えようと思っている」とこれからの意気込みを語る稲本氏だった。(取材・文:壬生智裕)
特集上映「フレデリック・バックの映画」は神保町シアターで開催中