サンダンス映画祭で話題の作品について、女流監督ミランダ・ジュライが語る!夫婦が共に監督できる秘訣とは?
パフォーマンス・アーティスト、作家、女優、そして映画監督としての顔を持つ、映画『君とボクの虹色の世界』のミランダ・ジュライが、今年のサンダンス映画祭で話題になった新作『ザ・フューチャー(原題) / The Future』について語った。
同作は、ロサンゼルスの安アパートで平凡な暮らしをしていたジェイソン(ハミッシュ・リンクレイター)とソフィー(ミランダ・ジュライ)は、ある日傷ついた猫を世話することを決意するが、その決意がそれまでの生活に変化を生じさせ、二人の関係が劇的に変わっていくというドラマ作品。
パフォーマンス・アーティスト、作家としても活躍する彼女にとって、映画作品は明らかに執筆のスタイルが違うのだろうか。「パフォーマンスするときも、本を書くときも、事前に浮かんだアイデアをノートに書き記し、それを後でまとめているんだけれど、実は映画でも同じ方法でやっているの。それら全部が自分の仕事だから媒体が違っても変化がないわ。この映画の冒頭部分には、わたしがパフォーマンスしているシーンがあって、(パフォーマンスは)映画と全く違った媒体ではあるけれど、映画内では自然で自由に表現しているの」と語ったとおり、個性的な彼女にしかできないスタイルがこの映画では観られる。
制作上で困難だったことは「実は、前作『君とボクの虹色の世界』を製作して、(評価が良かったため)すぐに次回作も製作できると思っていたの。確かに、共に製作しようと言ってきた人はいたけれど、前作と同じような映画ではないけれど、前作と同じくらい変わっている個性的な映画で、しかもスターが出演していないの……。だから、最終的にわたしに製作資金を出して自由に撮影させてくれたのはアメリカではなく、ドイツ、フランス、イギリスと海外のプロデューサーなの。結局、予算は前作とほとんど変わらず、スタッフのメンバーも製作資金を多く出したドイツのスタッフが、この映画には参加しているのよ」と明かし、さらに撮影日数も21日だったことを教えてくれた。
ミランダの夫は映画『サムサッカー』のマイク・ミルズ監督だが、脚本を執筆している際に彼のアイデアを取り入れたり、脚本を見せることはあるのか、との質問に「いつも同じ時期に二人とも脚本を執筆しているの。ただ、いつもわたしよりも彼の映画の方が2か月くらい公開が早いのよ! 自分だけが家族の中でクリエイティブな仕事をしているのなら良いけれど、他にもう一人家族にいるわけだから、すごく気になるわね。ただ、わたしは彼の意見を最も重宝しているわ。例えば、編集が終わるまでわたしの映画の映像を全然見せなくても、ちゃんと的確な助言をしてくれるの。ただ本当に重要なことは、二人の関係がお互いの仕事よりも重要なことがわかっていることだわ」とお互いが良い刺激になっているようだ。
ミランダは直接話してみるとどこかシャイでおとなしいイメージが伝わってくるが、ひとたび自身の作品の中に入ると、そのイメージを払拭させる凛とした彼女の姿がある不思議な魅力を持つ女性だ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)