ジブリ最新作『コクリコ坂から』は『青い山脈』をモチーフに!鈴木敏夫プロデューサーが制作秘話を明かす
スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、最新作『コクリコ坂から』について、これまでに何度も映画化されてきた石坂洋次郎の小説「青い山脈」がモチーフになったことを明かした。『コクリコ坂から』は、1963年の横浜を舞台に描かれる、高度成長期を生きる高校生の少女・海と少年・俊の初恋の物語。「ジブリの大きな特徴はファンタジー。だけど“コクリコ”をやるときにファンタジーじゃないものをやらないといけないと思った」と語る鈴木プロデューサーには相当な決心があったようだ。
『コクリコ坂から』は、1980年ごろ「なかよし」に連載されていた同名コミックが原作。「どうしてファンタジーじゃないものをやらないといけないと思ったかと聞かれると困るけど……」と思考を巡らせた鈴木プロデューサーは、「この“コクリコ”の原作を読んだときに石坂洋次郎が書いた小説『青い山脈』だと思った。『青い山脈』は、何度も映画化されていて、学園ドラマのスタートみたいな作品。学校の中である事件が起こって大騒ぎになる。そんなこんなである男女のラブロマンスになるという話。そういうのをやりたかった」と本作の企画を振り返った。
鈴木プロデューサーの言う「青い山脈」は、終戦後の東北地方の港町を舞台に若者のさわやかな青春を描いた作品で、確かに激動の時代にさわやかな青春を生きた男女という『コクリコ坂から』の設定は、「青い山脈」に通じるものがある。製作・宮崎駿、監督・高畑勲で制作された1987年公開のドキュメンタリー映画『柳川掘割物語』でも、「青い山脈」を基に考えていたという鈴木プロデューサーは、さらに『コクリコ坂から』の企画について、「昨日今日じゃなく、ずっと前から作りたかった。終戦直後『青い山脈』のようなドラマが日本人に元気を与えた。今の世の中見渡してみても経済的に日本という国はうまくいかなくなったわけでしょ? それで一昨年に僕ら考えたんですよ。現代の『青い山脈』を作れたら面白いんじゃないかと」と付け加えた。
次回作については、「“コクリコ”を作ったばかりでその先のことはしゃべりたくないんですよ。僕らはこの映画を作ってお客さんからどう思ってもらえるかに一番の関心があるんです」と言及を避けた鈴木プロデューサー。「1本1本真剣勝負なんですよ。これを押さえておきたいとか、これはやっておかなきゃと思って映画を作ったことはない」と語るその姿からは、映画制作に懸ける真剣な思いが伝わってきた。日本が低迷している現代、またそこに輪を掛けるように震災も起こってしまったが、「今この時期にこの映画を公開することに強い意義を感じる」という鈴木プロデューサーが「観る人に、被災地に、そして日本に元気になってほしい」との思いを込めた『コクリコ坂から』は、「青い山脈」のように日本を活気づける作品として、人々の心に届くことだろう。(取材・池田敬輔)
映画『コクリコ坂から』は全国公開中