園子温監督『ヒミズ』、ヴェネチア映画祭コンペ部門出品決定!震災・原発事故を受けてシナリオを書き変えた問題作!
「行け!稲中卓球部」の古谷実の同名原作を鬼才・園子温監督が実写化した映画『ヒミズ』が、現地時間8月31日より開催される第68回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品されることが決定した。今年日本から同部門に出品されているのは本作のみのため、日本映画としては北野武監督の映画『HANA-BI』以来となる金獅子賞受賞への期待が高まっている。これが同部門初出品となる園監督は公式上映に参加し、レッドカーペットに登場する予定だ。
若者の心の暗部をえぐり出すように描いた原作を、過激な暴力・性描写で知られる園監督が実写化に挑んだ本作が、今年のヴェネチア国際映画祭でグランプリを競う。園監督作品では過去に『冷たい熱帯魚』が同映画祭に出品されたものの、コンペティション部門へは今回が初めて。この報を受けた園監督は喜びを表す一方で「撮影の前に、大震災、原発事故が起きて、それまで書いていたシナリオを書き変えなくては、ならなくなりました。どうしても、今、この現実を映画の中に取り入れて、撮っておかなくてはいけないと思いました」と現実の出来事が本作に与えた影響について言及すると、「たった今、目の前で起きている本当の世界に即して、映画を撮るというのは、非常に生々しく、大変なことでありました。これは恐ろしい現実と向かい合う少年と少女の物語です」と撮影時の思いを明かしており、それだけに今回の出品決定では苦労が報われたという思いが強いようだ。
また、本作でメインキャスト・住田祐一を演じる染谷将太も、園監督作品初出演での快挙には驚いている様子。「現場中は見えない魔物と戦っていて常に興奮していました」と撮影を振り返ると、「その興奮がこの喜びの興奮につながったことに感動しています。国を越えてまで一人でもたくさんの方々に観ていただけたら幸せです」と世界という大舞台で上映されることを光栄に思っているようだった。同じく園監督と初タッグでヒロイン・茶沢景子を演じる二階堂ふみも、「とても大変な撮影でしたが、茶沢としてこの作品に参加することができてとても幸せでした」とコメントしている。
今回、日本映画でコンペ部門に出品されるのは本作のみ。昨年は三池崇史監督の映画『十三人の刺客』と村上春樹原作の映画『ノルウェイの森』が出品されたものの、日本映画の最高賞にあたる金獅子賞受賞は1997年の北野監督の映画『HANA-BI』以来遠ざかっており、本作へは大きな期待が懸かっている。カンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭といった有名映画祭にも出品されるなど、海外での評価も高い園監督の最新作、それも現在進行中の東日本大震災や原発事故を取り入れた問題作だけに、海外の観客がどのような評価を下すのかに注目だ。(編集部・福田麗)
映画『ヒミズ』は2012年春、シネクイントほか全国順次公開