キャスリン・ビグロー監督、新作のためオバマ政権から極秘情報を入手か?声明を公表
ウサマ・ビンラディン殺害作戦をテーマにした新作映画に取り組んでいるキャスリン・ビグロー監督と脚本家のマーク・ボールが、オバマ民主党政権から作戦の詳細を記した重要極秘情報へアクセスする権利を得たと報じられ、これに対し否定の声明を出した。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の首謀者であり、国際テロ組織アルカイダの最高指導者、ウサマ・ビンラディンは、今年5月、アメリカ軍によってパキスタンで発見され殺害されたが、この殺害計画を映画化する企画について、ニューヨーク・タイムズ紙はキャサリン・ビグロー監督と製作チームがアメリカの国家機密にアクセスできる権利を与えられたと報道。本作の全米公開は2012年10月12日を予定しているが、その直後の11月に行われるアメリカ大統領選挙で再選を狙うオバマ大統領の好印象につなげる狙いもあると報じた。これについて、議会の国土安全保障委員会で委員長を務める共和党のペーター・キング議員から、国防総省とCIAに対し、情報漏えいは国家の安全を危険にさらすものと抗議の手紙が送られた。
こうした事態を受け、ビグロー監督とマーク・ボールは声明を発表し、疑惑を完全に否定。「長年にわたるビン・ラディンの追跡について描く次回作は、もう何年も取り組んできた企画であり、クリントン政権、ブッシュ政権、そしてオバマ政権の3政権、さらに国防省とCIAの努力が集約されたものです。世界で最も重要な手配犯を探すという危険な任務は、軍関係者や情報委員会などに関わる人々が自らの命を危険にさらしながら、政治的提携に関わりなく、より大きな国益のために行われました。これはアメリカにとっての勝利であり、本作はこの大きな勝利を表現する以外の何ものでもありません」と語った。また、アメリカ政府側も否定しており、ホワイトハウスのカーニー報道官は、オバマ大統領がビグロー監督たちに提供したのは、この作戦における大統領の役目についての情報のみだった、とコメント。会見で記者を前に、「君たちのようにホワイトハウスを取材して、大統領に関わる記事や本、映画を作る場合は、担当者と話してもらえれば、我々は、事実を正しく伝えるようにしています。我々は極秘情報については議論をしません。今はまだ、テロの脅威に直面している最中なのですから、国土安全保障委員会は映画よりももっと重要なことを話し合ってもらいたいですね」とけん制した。
就任以来、低下していたオバマ大統領の支持率は、ビンラディン殺害後に57%に急上昇したが、その後、財政難や国民の政治不信などを受けて支持率は再び低下。2012年の大統領選挙を前になんとか挽回したいところでもあり、ビグロー監督の映画は好材料でもある。はやくも民主・共和両党のかけひきが始まっているようだ。(竹内エミコ)