枯葉剤被害者が自らの希望で被災地・福島&石巻へ「助け合う人々の姿に勇気づけられた」
23日、枯葉剤の被害を受け生きる人々の姿を描いたドキュメンタリー映画『沈黙の春を生きて』の試写会ならびに記者会見が東京・渋谷の映画美学校で行われ、出演者のヘザー・バウザーさん、坂田雅子監督が登壇。アメリカ人帰還兵の娘で障害を持ち生まれたヘザーさんは、アメリカ政府が何ら過ちを認めず補償を行うに至ってない現状を訴えるとともに、化学物質の影響で人生を変えられた自身の経験から、放射能に脅かされる日本にも「正しい情報を得ること、そのために質問・行動し続けることが大切」とメッセージを送った。
映画『沈黙の春を生きて』は、アメリカ軍が1961年から1975年まで続けた枯葉剤散布作戦により、その被害を受け人生を狂わされた人々と家族の姿を描くドキュメンタリー。当時のアメリカ政府は枯葉剤を「人体に影響がなく、土壌も1年で回復する」と説明していたが、その被害は戦後35年を経た今も続き、ベトナムに駐留していた米軍兵士も枯葉剤を浴び、ヘザーさんのような子どもの世代や孫の世代にまで被害が及んでいる。
片足と指を欠損して生まれたヘザーさんは、本作の中で「父の人生を致命的に」変えたベトナムを訪れる。ヘザーさんはベトナムについて「生まれたときからベトナム戦争を切り離せない人生だったし、父もベトナム戦争に人生を破壊されたので、小さいころは怪物のような土地に思っていた」とその印象を語ったが、実際に訪れてみると「自分たちと同じように人々が生活をし、そして温かな人たちがいるということを知るだけでも計り知れない癒やしになった」と心境の変化を告白。映画はヘザーさんの心の旅をつづる内容にもなっている。
またヘザーさんは会見に先立ち、自身の希望で震災の被災地である福島と石巻を訪問。大変な状況の中で互いに助け合う人々の姿に勇気づけられたといい、枯葉剤に含まれたダイオキシンと放射能、見えない恐怖に直面する点が同じであることから、「正しい情報を得ること、そのために質問し続けることが大切。受け身や無関心になるのではなく、行動し続けて。正しい知識を増やして精神的にも強く、自分を教育していってほしい」とメッセージを送っていた。(取材・文:長谷川亮)
映画『沈黙の春を生きて』は9月24日から岩波ホールで4週間限定上映