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いまだに日本公開できない『南京!南京!』警察官の厳重警備のもと1日だけの特別上映!

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映画『南京!南京!』の陸川監督
映画『南京!南京!』の陸川監督

 2009年に製作されながらも、タブー視されている南京大虐殺を題材にしていることもあり、いまだに日本未公開となっている中国映画『南京!南京!』の特別上映会(史実を守る映画祭実行委員会:主催)と陸川監督のトークショーが21日、東京・なかのZERO小ホールで行われた。会場周辺には万が一に備えて弁護士やボランティアスタッフ29人と警視庁から約20人の警察官が警備にあたったが、混乱はなかった。

 同作品は、いまだ史実をめぐって論争の絶えない南京大虐殺を、日本軍兵士と中国人側の両方の視点から描いた歴史大作。2009年4月に公開された中国では興行成績25億円の大ヒットとなるも賛否両論を巻き起こし、騒動を沈静化するために中国政府が興行を打ち切る事態へと発展した。しかし作品はスペインのサンセバスチャン国際映画祭でゴールデン・シェル賞(最優秀作品賞)を受賞するなど海外で高評価を獲得。また日本兵・伊田役の木幡竜は、ドニー・イェン主演の中国映画『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』(9月17日公開)に準主役級で抜てきされる注目株へと成長した。その勢いにノって日本公開も予定されていたが、劇中で使用している楽曲の著作権問題でこじれて配給会社との交渉が決裂。日本公開は暗礁に乗り上げてしまった。

 一日限りの上映会とはいえ、今回ようやく日本初披露されるにあたり、新右翼団体「一水会」顧問の鈴木邦男氏や雑誌「創」の篠田博之編集長、そして戦争を体験した高齢者を中心に2回の上映で約900人の観客が来場し会場は熱気に包まれた。上映を見守ろうと、新作『王的盛宴』を中国で撮影中の陸川監督もスケジュールをぬって、自費で1泊2日の強行来日を果たした。観客の大拍手に迎えられながらステージに登壇した陸川監督は「この映画は世界中を旅して来ました。そして、最終地点が日本です。でも今日この日が、日本でのスタートになれば。日本でもたくさんの人に見て欲しい」と今後も日本公開を目指して尽力することを示唆した。

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 トークショーで陸川監督は本作を製作するにあたり、中国・北京にある抗日戦争記念館に保管されている日本兵が撮影した写真4万点や手紙にすべて目を通し、事実に基づいて製作したことを力説した。陸川監督は「それまで日本兵に対して残虐的なイメージを持っていましたがその手紙を読み、彼らも家族を持つ普通の人間で、戦争によって変わってしまったのだと気付きました。つまり本作は単なる日中の問題ではなく、戦争を経験した他国の人たちの話でもあるのです。これを機会に、人類と戦争の関係について考えるきっかけになればと思ってます」と訴えた。

 またトークショー後半は監督の希望で急きょ、観客からの質疑に応じた。30歳代の男性からは「日本人の中には、南京大虐殺はウソだとか捏造だと言う人がいます。県知事や国会議員、そしてたぶん元総理大臣も。そのような声を聞いてどう思いますか?」との質問が出た。陸川監督は「『事実ではない』と言う偉い方々にも、この映画を見て欲しいです」とアピールしつつ「ちなみにドイツは、戦時中のユダヤ人の虐殺を認めて謝罪しています。罪を犯したら認めて、謝る。それが本当の、上に立つ人の姿だと思います」と毅然とした態度で語ると、会場から拍手が沸き起こった。

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 また劇中、日本兵の角川(中泉英雄)が上官の蛮行を非難するような態度を見せることから、実際に東京裁判で、総司令官だった松井石根大将が師団長らを集めて南京での兵士たちによる暴行行為を管理できなかったことに対し「泣いて怒った」と発言したことを引き合いに出し「そうした証言があったことを知った上で(角川のキャラクターを)描いているのか?」という突っ込んだ質問もあった。それに対しても陸川監督は「私もその裁判記録は読んでいます。ただ、私の映画には将校クラスの人物は登場しません。それは、権力者は自分のやりたいことや考えを自分で表現することができたからです。でも実際に戦時中、人を殺したり、命を落とした人たちというのは、自分の言葉を口に出すことすらできなかった。戦争の被害者というのは、その沈黙者たちなのです」と、歴史に翻弄させられた名も無き人たちにスポットを当てた製作意図を明かすと、会場は再び拍手で包まれた。

 終演後、出演俳優のロウ・イエなど役者目当てで見に来たという静岡の女性(24)に感想を尋ねると「日本人としては、この映画で描かれていることはうそであって欲しいと思っていたけど、トークショーを聞いて事実に基づいていると知り、辛いですね」と複雑な表情を見せていた。また埼玉から来た女性(79)は「こういう重い映画を、ぜひ若い人たちにも見て欲しいね」と力を込めて語っていた。(取材・文:中山治美)

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