アカデミー賞日本代表に選ばれたことに喜び!邦画界現役監督最高齢99歳の新藤兼人監督、車いすからのユーモアたっぷりのスピーチに大喝采!
10日、銀座テアトルシネマにて、邦画界現役監督最高齢となる99歳の新藤兼人監督が映画『一枚のハガキ』のヒット御礼舞台あいさつを行い、本作が第84回アカデミー賞の外国語映画賞部門への日本代表作品として選ばれたことに対し「ありがとうございます。これからうまくいけばいいですが、たぶんうまくいくと思います。何か調子に乗っちゃった感じがある。みなさんも(選ばれたことに)心から賛成してください」とユーモラスに喜びを語った。
新藤監督が、自身の戦争体験を基に、戦争の不条理さと人間のたくましさを描き出した本作。8月13日の公開以来、各劇場で連日満員となる大ヒットを記録し、つい先日には、第84回アカデミー賞の外国語映画賞部門への日本からの出品作品となったことが発表されている。
この日新藤監督は車椅子で登場したものの、一度話し出すとなかなか止まらない元気ぶりを発揮。今作がヒットしていることについて「小さな独立プロダクションにとって、支えになるのでは。みなさんにいくらお礼を言っても、言いきれないほど感謝しています」と喜びをあらわに。東日本大震災のショックに揺れる現在の日本人へメッセージを求められると「わたしもかつて兵隊になって死の戦線をさまよいましたけど、帰ってきて新しい大地で立ち上がり、前を見て歩くことだけを心掛けてきました。金がないけど、映画を作ろう。作れば、支えてくれる人がいる。そうすれば、前が開けてくる、そう思いながらやってきました。ほかのことは何も考えないで、ただ前を向いてやろう、ということです」と自身の道程を振り返りながら熱く語った。
そして、終了時間になり最後のメッセージを求められると「わたしは人前では泣かない。石のつぶてが飛んできても、前を向いている。石がひたいにぶつかっても、前を向いて泣かない。泣くと気が緩んで勇気が出なくなる。だからわたしに石をぶつけてみて下さい。泣きません!」と語ると観客は大笑い。さらに新藤監督は「この映画館の入り口に石をそろえて……」と冗談を語り続け、車椅子の介添えをしていた女性から「時間切れです!」とささやかれると「どうか石を投げないで下さい!」と叫び会場はまた爆笑。新藤監督のちゃめっ気たっぷりのスピーチに、終了後は拍手喝采が沸き起こっていた。
また、この日は豊川悦司と大竹しのぶが寄せた喜びのコメントも発表された。豊川は「本当にたくさんの方が、この映画を観て下さって心よりうれしく思います。本当にありがとうございます。そして、アカデミー賞の日本映画代表に選ばれたこと、とてもうれしく思っています。僕にとっても、『一枚のハガキ』は特別な作品です。今日ご覧になったみなさんが、またどなたかにこの映画を語っていただけることを切に願っています。監督、この映画に呼んでいただいて、本当にありがとうございました。次回作もぜひ、豊川悦司をお忘れなく。お待ちしています」と喜びと共に、新藤監督にさりげなく次回作への参加希望もアピールするコメントを寄せた。
一方、大竹からは「『一枚のハガキ』が大勢の方に観ていただいている事を知り、大変うれしく思っています。新藤監督が映画を通して叫び続けてきたこと、そして最後に言っておかなければならないことが、今、日本中の人たちの心に広がっているのですね。また、今回アカデミー賞外国語映画賞の日本代表に選ばれたことをお聞きしました。監督の言葉が、監督の思いが、世界中の人たちに届くことができるのも夢じゃありません。監督、本当におめでとうございます。そして、観て下さった皆様、本当にありがとうございました」と本作が日本のみならず、世界でお披露目されるチャンスに恵まれたことに喜びのメッセージを送っていた。
映画『一枚のハガキ』は第23回東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞した感動の人間ドラマ。終戦間際に招集された中年兵士100名のうち94名が戦死し、残った6名のうちのひとりである男性が、戦死した友人から託された一枚のハガキをもとに、その後の人生に立ち向かっていく姿を描く。生き残った元兵士を豊川悦司、戦士した友人の妻を大竹しのぶが演じている。(古河優)
映画『一枚のハガキ』は全国公開中
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