中谷美紀、初舞台のカナダ公演開幕で「まるで夢のよう」観客総立ちで拍手鳴りやまず
女優の中谷美紀が初舞台にして一人三役に挑んだ舞台「猟銃」が、現地時間9月7日の夜にカナダ・モントリオールの劇場「USINE C」で開幕、全公演ソールドアウトという大盛況の中、上演後には観客総立ちのスタンディングオベーションを受けた。
「猟銃」は、一人の男の13年にわたる不倫の恋を、妻、愛人、愛人の娘からの三通の手紙によって浮き彫りにしていく、井上靖さんの短編小説の舞台化。中谷は、この年齢も立場も違う3人の女性を1人で演じる。演出を手掛けたのは、映画『レッド・バイオリン』がアカデミー賞を受賞するなど、映画監督としても才能を発揮するフランソワ・ジラール。ジラールは映画『シルク』の撮影中、出演者の一人だった中谷の演技にほれこみ、出演を依頼したという。
カナダ公演にあたって中谷は、7月下旬から単身モントリオール入り。時差の調整、セリフの個人練習に取り掛かり、8月15 日からは読み合わせ、ディスカッションを行った。さらに本番の2週間以上前から、公演を行う劇場「USINE C」にて、照明、音響スタッフをはじめするスタッフをそろえ、本番さながらのけいこを行うなど、準備万端で海外公演にのぞんだ。
そうして幕を開けた舞台について中谷は、「未知なるものへの恐れの気持ちもありましたが、飛び込んでみると、そこには温かく輝かしく、深い世界が待っていました」とコメント。終演後には、舞台袖にてジラール監督が、「ようこそ、この素晴らしい舞台の世界へ」と中谷を抱きしめてくれたといい、「思わず涙が溢れました」と感慨深く振り返った。
また中谷は、ジラール監督の「我々は皆常に仕事ばかりしているんだ。その仕事を楽しまなくていつ楽しむのだろうか?」という印象深い言葉を紹介。そして、「仕事とは苦しくても当然だと思っていましたが、人生を楽しみ、仕事を楽しみ、皆に笑顔をもたらしながらも素晴らしい作品を作ることができるのだということをフランソワ・ジラール監督から学びました」とコメントし、現地でのけいこを存分に楽しみ、情熱的に取り組めたことをうかがわせた。
初日を迎えた劇場は、全公演のチケットが売り切れる大盛況ぶり。上演が終わると客席からの拍手が鳴り止まず、中谷の「スタンディングオベーションを目の当たりにしたときには、まるで夢のようでした」という言葉どおり、観客から総立ちの称賛を受けた。また中谷は、上演2日目にジラール監督と共演者のロドリーグ・プロトー、翻案のセルジュ・ラモットによるトークショーを行い、通訳を介さない、全てフランス語による受け答えも披露したという。
カナダでの公演は10日まで。その後舞台は日本に移り、10月から凱旋(がいせん)公演が行われる。中谷は「三人の女性を通して、心の奥深くに眠っている本当のご自身が見えてくるかもしれません。あなたは愛することを望みますか? あるいは愛されることを望みますか?」と公演を楽しみにしている日本の観客に向けメッセージを送っている。(編集部・入倉功一)
舞台「猟銃」は10月3日~23日のPARCO劇場での上演を皮切りに、兵庫、新潟、福岡、名古屋、京都で上演予定