U2、パール・ジャム、ニール・ヤングの映画が大盛況!ロック・スターの登場はハリウッドスターを超える人気
第36回トロント国際映画祭
昨年は、ブルース・スプリングスティーンのドキュメンタリーが初上映され話題となっていたが、今年のトロント映画祭では、U2、パール・ジャム、ニール・ヤングなどの音楽ドキュメンタリーが初上映され、ハリウッドスター登場以上の盛り上がりを見せた。
U2の作品『フロム・ザ・スカイ・ダウン(原題)/ From the Sky Down』は、『不都合な真実』でアカデミー賞を受賞した監督デイヴィス・グッゲンハイムによるドキュメンタリー。バンドの歴史を変えた傑作『アクトン・ベイビー』制作時の貴重な映像と、現在それを振り返るバンド・メンバーのインタビューによって構成された作品だ。興味深いのは、当時バンドがくぐり抜けた痛々しい経験を、包み隠さず映像にしているところ。そのせいで、ボノは、観るのが苦痛で、映画を初めて観たときに、「嫌いだった」と語ったほど。しかし、監督はそれでも、「ほとんど修正をしてくれなかった」のだそう。しかし、トロント映画祭で、「観客と一緒に観て、その反応を実感したら、この作品が”ほとんど”好きになった」とボノは記者会見で語っていた。
また、大御所監督のキャメロン・クロウによるパール・ジャムの作品『PJ20 パール・ジャム トゥウェンティ』は、U2とは打って変わって、バンドの20年のキャリアをまとめ上げた作品。長い間の浮き沈みを繰り返し、それでも、解散することなく続けてきたこのバンドを歴史を、彼らの初期のころからの信者でもあり、友人でもあり、そして音楽ジャーナリストでもあり、もちろん才能ある映画監督でもあるクロウだからこその、よりパーソナルな視点でバンドを内側から描いてみせたような作品だ。日本でも10月に上映も決定している。
さらに、ジョナサン・デミによるニール・ヤングの『ニール・ヤング・ライフ(原題)/ Neil Young Life』は、ニール・ヤングがふるさとを車で走りながら、子どものときの思い出を語り、その間に、トロントのライブハウスでの最新ライブの映像が挿入されるという手法。コンサート映画と考えるほうが正しいのかもしれないが、語りと歌で、ニール・ヤングの人生が浮き彫りになるという作品だ。上の2作に比べると、情報量も少なく、非常にシンプルで、淡々と語る構造ではあるのだが、彼の曲の深さで、重みのある作品に仕上がっているのが印象的だった。
去年のスプリングスティーンしかり、映画祭にロック・スターが登場するとその盛り上がりは、ブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリー顔負けだ。とりわけ、ライブ以外においては、めったに公の場に姿を見せないパール・ジャムが壇上に上がった際の歓声の大きさは、「トロント映画祭一だった」とも報道されていた。また、『PJ20 パール・ジャム トゥウェンティ』のチケットがこの映画祭で最も入手困難だった作品だとこの日のプレミアで映画祭がコメントしていた。(取材・文:中村明美)