佐野史郎、震災直後にクランクインした映画への思いを「亡くなられた方たちへの供養の思いが強い」
昨年宇宙より帰還した小惑星探査機はやぶさを題材にした映画『はやぶさ/HAYABUSA』と文部科学省がタイアップし、24日に日本科学未来館で行われた全国小・中学生作文絵画コンテストに、プレゼンターとして『はやぶさ/HAYABUSA』出演者の佐野史郎が登壇。佐野が演じた役のモデルである、はやぶさプロジェクトマネージャーの川口淳一郎氏と息の合ったトークを繰り広げたほか、本作に込めた思いを「東日本大震災で亡くなられた方たちへの供養の思いが強い」と明かした。
撮影中に初めて川口氏と対面をしたという佐野は、「撮影前にお会いしなくてよかったと思っています。事前にお会いすると『この方を演じないといけないのか』とさらなるプレッシャーがかかるので」と笑顔でコメント。日本が誇る科学者を演じることに、少々プレッシャーを感じていたことを明かした。またすでに映画を観たという川口氏は「不思議な気がした」と感想を口にする。というのも、メガホンを取った堤幸彦監督が、実際のはやぶさプロジェクトを完全に再現しようとこだわっていたため、「(映画の中の佐野が)髪型や髪の色もわたしを真似ていたし、わたしが着ているような服も召しになっていた。なので、今日は同じ色のネクタイにならないようにしてきました」と佐野とは異なるネクタイをアピールして会場の笑いを誘った。
そして川口氏は、15年にも及んだというはやぶさプロジェクトの中で、困難を乗り切るために必要だったこととして「精神力。なでしこジャパンと同じで、諦めない心と、何がなんでもという強い意志を持つことです」と説得力のあるエールを子どもたちに披露。それを受けた佐野は、はやぶさが一時的に消息不明になったときの川口氏の行動を「科学者なのに、わざわざ神社に行って手を合わせたらはやぶさが発見された。日本を代表する科学の頭脳でも神頼みをするということから、やれることは何でもやった方がいいということを学びました」と人間味のある川口氏の人柄をたたえた。そして、東日本大震災の直後にクランクインしたことに触れ、本作に込めた思いを「たくさんの方が亡くなられて、供養の思いが強かったです。子どもの頃に聞いた『亡くなったらお星様になる』っていう話と重なりました」と真摯(しんし)に語った。
『はやぶさ/HAYABUSA』は2003年に飛び立ち、小惑星のイトカワからサンプルの採取に成功した小惑星探査機「はやぶさ」の挑戦を描いた壮大なドラマ。7年に及ぶプロジェクトの中で、装置の故障や燃料漏れなどの危機を乗り越え、宇宙科学研究所(JAXA)のスタッフが偉業を成し遂げる姿を描く。(肥沼和之)
映画『はやぶさ/HAYABUSA』は10月1日より全国公開