ザ・ビートルズのジョージ・ハリスンのドキュメンタリーがニューヨーク映画祭で上映、マーティン・スコセッシ監督が語る!
現在開催されているニューヨーク映画祭で、元ザ・ビートルズのメンバーであったジョージ・ハリスンを描いた新作『ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド / Goerge Harrison : Living in the Material World』が上映され、ロンドンで同映画のプレミアを迎える予定だったマーティン・スコセッシ監督がSkype記者会見で語ってくれた。
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同作は、ジョージ・ハリスンを取り巻く多くの友人やビートルズのメンバー、ポール・マッカートニーやリンゴ・スター、さらに彼にスピリチュアルな影響を与えたインドのシタール奏者ラヴィ・シャンカールを通して、音楽界のスターの実像を描いたドキュメンタリー作品。映画は3時間半の長編で、2部構成に分かれている。過去にマーティン・スコセッシ監督は、ボブ・ディランを描いた映画『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』、ザ・ローリング・ストーンズを描いた映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』などでもミュージシャンを手掛けていた。
これまで数々のミュージシャンのドキュメンタリー作品を手掛けてきたが、今回ザ・ビートルズのメンバーだったジョージ・ハリスンの実像を描くことになった経緯について「今から5年前にちょうど映画『ディパーテッド』を撮り終え、次の仕事へ取りかかろうとしていた際に、この映画の製作総指揮を担当したマーガレット・ボッドがジョージの妻、オリヴィアが夫の人生をまとめた映画製作のことで、あなたに会いたがっていると話してきたんだ」と妻から直接依頼されたことを明かした。そしてオリヴィアとの会合では「彼女はアーカイブに残されているジョージが使用していた私物を見せてくれ、それらはみな素晴らしく、心を動かされる物ばかりだったんだ。さらにその会合では、彼女と映画内で描くことになる基本的な原則を決めっていった」とザ・ビートルズの解散後のジョージの人生に興味を持ったことも、制作のきっかけになったそうだ。
具体的な編集作業について「まず、すぐに集めることのできるザ・ビートルズのメンバーとして活動をしていた頃の映像や情報を集め始め、あっという間にビートルズが解散するために法的に署名をしたところまでスムーズに揃えることができた」とビートルズのアーカイブ映像を手に入れるのには苦労しなかったそうだが、「ジョージがザ・ビートルズのメンバーとしてあらゆるものを手に入れたにもかかわらず、達成感を得られずに、それ以上のものを求めていくという精神的に超絶していく期間が大変だったんだ」と語った。この精神的に超絶していく姿は、主に音楽にかかわるものだけを選択し、その中でインドのシタール奏者ラヴィ・シャンカールとの親密な関係が描かれている。
この映画では、ビートルズのオリジナルトラックをリミックスしていたそうだ。「まず、1963年のオリジナルトラックだったために、クリアなサウンドにしてみたが、クリアすぎて逆にロックのテンションが損なわれてしまって、何度もリミックスし直しながら、結局その過程で2年もの月日を費やしていたんだ。ラヴィ・シャンカールも、(音楽は)言葉だけではあまり表現できないと言っている。だから、編集作業はすべて音楽のために行ったと言えるものに仕上がっている」と自信をのぞかせた。
映画内では、ビートルズ時代に作曲した楽曲を通して、ジョン・レノンやポール・マッカートニーに劣らぬ才能を再発見できるだけでなく、変質者にナイフで襲われ重傷を負った事件やジョンの死などもしっかり描かれ、見応えのある傑作になっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)