在日コリアン3世のサッカー選手・鄭大世!日本生まれ、国籍は韓国、そして代表チームは北朝鮮……激動の3年半を追ったドキュメンタリーが公開決定!
2006年から2010年まで川崎フロンターレに所属していたサッカー選手・鄭大世の軌跡を追ったドキュメンタリー映画『TESE』が11月に公開される。本作は、在日コリアン3世として日本に生まれ、韓国国籍を持ち、北朝鮮代表チームに名を連ねている鄭を、世界6か国・1,000日にわたって追い掛けたヒューマン・ドキュメンタリーだ。
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現在はドイツ・ブンデスリーガ2部のVfLボーフムで、日本人選手・乾貴士とチームメイトである鄭大世(チョン・テセ)。2010-2011シーズンのホーム開幕戦では2得点を挙げる活躍を見せ、早くも高い評価を獲得している。だが、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。自身の境遇について「韓国に行っても、北朝鮮に行っても日本人扱い。だが日本で暮らしていても、日本人扱いでもない。故郷はいっぱいあるが、ホームがない……」と語る鄭は、日本・名古屋生まれ。父親は在日韓国人2世だったが、本人は朝鮮学校で教育を受けてきたため、祖国を北朝鮮と見なしており、ナショナルチームは北朝鮮代表を選んだ。韓国が鄭の北朝鮮国籍取得を拒否したため、当初は北朝鮮代表入りは厳しいとみられていたが、関係各所への交渉の結果、現在はFIFAに認められる形で北朝鮮代表に参加している。だが、そのような複雑な境遇故に、鄭は孤独感にさいなまれることも多かったという。
そんな鄭の姿を、一切のナレーション説明を排する形で、鄭自身の言葉と行動だけで描くのが本作だ。日本で生まれ、Jリーグで活躍していた彼はどうして日本代表ではなく、北朝鮮代表を選んだのか? 作中、「サッカー」を通して描かれる葛藤(かっとう)は一人の若者が背負うにはあまりにも大きいもの。サッカー選手として高みを目指し続ける一方で、自らの祖国を探さなくてはいけなかった鄭の姿は、観ているこちらの胸が締めつけられるほどだ。
だが、鄭は、2007年に初選出されて以降、北朝鮮代表チームの主力として活躍し、2010年のFIFAワールドカップ南アフリカ大会では、北朝鮮の44年ぶりとなる本戦出場に貢献。その後はJリーグを飛び出す形で、海外挑戦も果たすなど、サッカー選手として今まさにピークを迎えようとしている。ドキュメンタリーはここでいったん終わるものの、鄭のサッカー人生はまだまだ続く。すでに2014年FIFAワールドカップブラジル大会予選では日本代表と戦うことも決定しているなど、映画館を出た後にこそ、鄭の活躍に注目したい。そんな気持ちにさせられるドキュメンタリー作品に仕上がっている。(編集部・福田麗)
映画『TESE』は11月26日よりTOHOシネマズ川崎にて先行公開 11月19日には特別上映もあり