「オレの映画をいじるなら家を燃やしてやる!」スティーヴン・ソダーバーグ、映画監督としての気概示す!
未知のウイルス蔓延(まんえん)によりパニックを起こす人々のドラマを丁寧に掘り下げた最新作『コンテイジョン』を引っ提げ、スティーヴン・ソダーバーグ監督がおよそ3年ぶりの来日を果たした。ソダーバーグ監督は、映画に対する熱い思いや監督としての気概とは裏腹に、休養に対する自身の考えを明かした。
マット・デイモン、ジュード・ロウ、ローレンス・フィッシュバーン、マリオン・コティヤール、グウィネス・パルトロー、ケイト・ウィンスレットら豪華キャストが勢ぞろいする本作では、脚本作成の段階でマット・デイモンとローレンス・フィッシュバーンの名前が挙がっていたという。マット・デイモンとは映画『オーシャンズ』シリーズや『インフォーマント!』などでタッグを組んだソダーバーグ監督だが、「マットは観客の目に自分がどう映りたいとか余計なことは一切考えず、ただストーリーだけに集中することができる素晴らしい俳優だよ」とベタ褒めする。
そのほかの俳優についても、ジュード・ロウは「人々の救世主的な役柄がとても合っていると感じた」といい、マリオン・コティヤールについては、本映画のための取材段階で監督が出会ったWHO(世界保健機関)の女性と雰囲気がよく似ていたとキャスティング秘話を語る。ケイト・ウィンスレットとは前々から一緒に仕事をしてみたかったそうで今回念願がかなった形だ。グウィネス・パルトローに関しては「ビッグスターの彼女が、映画の中で解剖というとんでもない目に遭わされるなんてあまりにも衝撃的で面白いと思ったんだよ」といたずらっ子のような笑顔を見せた。
そして、ソダーバーグ監督が映画を撮る際の最優先事項は「コントロール」だそうで、自分が映画を作り始めた当初から、最終的な権限を持つことができたのはラッキーだったと振り返る。「もしオレの映画をいじるつもりなら家を燃やしてやるぞ!」というぐらいの気概がなければ、映画監督なんてやってられないとユーモアを交えながら半ば本気で語っていた。
昨年末あたりから、引退するのでは? とのうわさも出ていたソダーバーグ監督。今後しばらく休養するのは確かなようで、「映画を撮ることにかけては、22年前の自分よりたけているかもしれないけれど、じゃあ一体何が今の自分にとって一番大切なのかという答えはまだ出ていないんだよ。また監督としてカムバックするためには、今よりもいい形で戻ってこなければ意味がないからね」と意味深な言葉で締めくくった。もしかしたら当分の間新作を発表することがないかもしれない監督渾身(こんしん)の一作『コンテイジョン』を、今こそ目に焼き付けてもらいたい。(取材・文:平野敦子)
映画『コンテイジョン』は公開中