日本の社会人ラガーマンを取り巻く厳しい現状吐露…最弱チームが最強チームに成長するブラピ主演『マネーボール』に共感!
米メジャーリーグの貧乏球団オークランド・アスレチックスを、独自の理論で常勝球団へと育て上げた実在のGMビリー・ビーンを、ブラッド・ピットが演じる映画『マネーボール』の異業種試写会が、本作の配給会社であるソニー・ピクチャーズの試写室にて行われた。
この日、試写会に招待されたのは、IT企業、ベンチャー企業などさまざまな分野で活躍しているビジネスマンたち。上映後、感想を話しながら会場を後にする男たちのなかで、ひときわ目立っていたのが、大きな体をスーツに包んだ日本IBMラグビー部BBBのメンバーたちだった。現在、会社でプロジェクトマネージャーとして活躍しているという小玉達郎選手は、「スポーツのみならず、ビジネスマンとしても、参考にしたい部分がたくさんありました」と話し、「ただ与えられたことをこなすだけじゃなく、情熱を持って物事に取り組むことの大切さを教えられました」と、アスリートとしても、ビジネスマンとしても、芯のぶれないビリー・ビーンの生き様を絶賛。「ラグビーも、仕事も自分を信じて頑張りたいですね」と笑顔を見せた。
社会人とアスリート、二足のわらじを履いた彼らのチームでは、ほとんどの選手が朝の9時から夜遅くまで、フルタイムの勤務をこなしながら、少ない練習時間のなかでトップイーストと呼ばれる二部リーグから、トップリーグへの昇格を目指している。現在、トップイーストでは唯一、助っ人の外人選手もおらず、監督も不在のチームだ。本作の主役であるアスレチックスも、さまざまな逆境に打ち勝ったチーム。宣伝担当者は、「スポーツのジャンルを越えて、厳しい条件のもと戦っている彼らに、ぜひ観て欲しかったです」と語る。プロップの西山淳哉選手は「映画のなかでは、うまい選手を次々に獲得していくニューヨーク・ヤンキースが登場しますが、与えられた条件のなかで戦わなければいけないのは、どんなスポーツのチームでも一緒だと思います。独自のマネーボール理論から選び出した選手たちのポテンシャルを信じて、情熱的にチームを引っ張っていくビリー・ビーンの姿には胸が熱くなりました」と話し、今年チームに移籍してきたばかりという日栄田泰祐選手は、「監督がいないのは、デメリットもあるけれど、メリットもたくさんあります。一人一人が監督として、みんなで意見を出し合えるのがうちのチームのいいところ。ビリー・ビーンは勝つために、保守的な監督と戦いながら、新しいアイデアを取り入れていました。僕らも、監督がいない分、自由にできるところがあるから、いろんなアイデアを取り入れられる。ひとりひとりが彼のように情熱的になって、チーム力を上げていきたいです」と語った。
マネーボール理論という野球界の常識をぶち破るような理論で集められたアスレチックスの選手たちも、始めはモチベーションも低く、負けてばかり。だが、ビリーの「お前たちは勝てるはずだ!」という言葉で一勝し、常勝球団へと変身を遂げていく。自信とデータが、勝利を呼んだ。社会人ラグビー選手として約10年のキャリアを持つ南繁治選手は、「勝つことが、やはり一番大事」という。ビリーは、ベテラン選手による若手選手の意識改革を実行したが、南選手は、若手選手に勝つ喜びを教えたい、と話した。そんな先輩の言葉に呼応するかのように、今年で5年目となる道廣祐太選手もまた、「ぼくたちのチームは、今シーズン、これまで全戦全敗しています。チームに新しく加わった選手は、まだこのチームでの勝利を経験していない。アスレチックスの選手が、一勝して勢いをつかんだように、ぼくも勝つことの喜びを味わせてあげたい。勝つことでチーム力を上げていきたい」と話した。
現在、チームの戦績は全戦全敗。もう後がないという彼らだが、5日に行われるという試合に向け、「絶対に勝ちます!」と、士気を高めて会場を後にしたように、この日、本作を鑑賞した男たちは、誰もが口を揃えて「明日からの生き方の参考にしたい」と、語った。ただの野球映画でも、ただの理論を語っただけでもない。ビリー・ビーンという熱い男の生き様を、ブラッド・ピットが情熱的に演じた本作は、さまざまな分野で活躍する男たちの魂を揺さぶった。さまざまなシーンで、迷いを感じているときにこそ観てもらいたい一本だ。(編集部:森田真帆)