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“ハンガリーの至宝”タル・ベーラ監督来日! 引退宣言の理由と今後は?

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妥協なき映画哲学を語ったタル・ベーラ監督
妥協なき映画哲学を語ったタル・ベーラ監督

 ハンガリーの至宝とも称されるタル・ベーラ監督が新作映画『ニーチェの馬』と共に来日を果たし、22日に駐日ハンガリー共和国大使館で記者会見を行った。『ニーチェの馬』はベルリン国際映画祭で銀熊賞と国際批評家連盟賞をダブル受賞し、米アカデミー賞外国語映画賞ハンガリー代表にも選ばれている作品。傑作を作り上げたタル・ベーラ監督だが「これが最後の作品」と語っており、その理由や今後について来日直後の会見で語った。

 タル・ベーラ監督は1955年ハンガリー生まれ。16歳の時から映画を撮り始め、7時間半もの大作『サタンタンゴ』や、カンヌ、ベルリンなどの国際映画祭に出品された『ヴェルクマイスター・ハーモニー』といった作品で世界的に知られている。「まだ数時間前に飛行機が着いたばかり」という監督はやや疲れを顔ににじませたが、記者から質問が寄せられると言葉を選びながらも饒舌(じょうぜつ)に語り出す。

 まず真っ先に飛んだ引退の理由を問う質問に対しては「34年映画を作り続けてきて、それは長い道のりでした。そしてこの映画に取り掛かる前に自分の仕事を終える、その準備が整った感じがありました。今後も続けていくなら今までやってきたことの模倣に過ぎず、繰り返す理由は見当たりません。それはとてもチープなものになってしまうでしょう」とあたかも哲学者のように胸の内を明かした。

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 その後も監督は独自の映画論を展開。監督にとって映画は「ショービジネスではなく芸術」であり、「観客はわれわれと同じく尊厳と人格を持った存在で、その心に触れたり近づくことができるような作品を作らなければならない」と話し、「子どもに娯楽やファーストフードを与えるのと違い、観客を満足させるためにわたしの全てを総動員しなければなりません」と自身の妥協なき映画哲学を語った。

 気になる今後については監督からの引退こそ翻しはしなかったが、プロデューサーとしての関わりや後進への指導について言及。「悲しい状況の映画産業の中で映画を作る機会や場のない人たちを、傘のように守り助けていきたい」と映画への愛は依然やんでいないようだった。

 『ニーチェの馬』はトリノの広場で泣きながら馬の首をかき抱き、そのまま発狂したとされる哲学者ニーチェの逸話にインスピレーションを受け生まれた作品。人里離れた石造りの家で暮らす、農夫とその娘、そして疲れ果てた馬が送る、暴風が吹き荒れる6日間の物語を描く。(取材・文:長谷川亮)

映画『ニーチェの馬』は2012年2月、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

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