『けいおん!』山田尚子監督、寂しい…と本音チラリ!テレビシリーズ最終回へとつながる劇場版の展開は感動もの!
人気テレビシリーズ初の劇場版となる映画『けいおん!』の山田尚子監督がインタビューに応え、映画化のきっかけや本作への思いを明かした。時折漏れる本音からは、今回の映画でシリーズにひと区切りつくことの寂しさがのぞいた。
テレビシリーズ第2期最終回で、まさかの映画化が発表され、その後も続報が出るたびに大きな話題になっていた「けいおん!」。山田監督は、発表方法について「シリーズだったら、毎週次回予告があるじゃないですか。だから、最終回でそれがないのは寂しいと思って」と意図を明かした。山田監督自身は最終回の一月ほど前に映画化について知らされており、声優たちに映画化を伝えたのは最終回のアフレコが終了した直後。「もう、ぎゃあって感じでした。こう、タオルを振り回している人とかもいて、面白かったですね」と山田監督は振り返った。
そのころはまだ映画の内容も決まっておらず、山田監督も、主人公たちがロンドンへ卒業旅行に行くことになるとは夢にも思わなかったという。テレビシリーズでは軽音楽部に所属する主人公たちの日常を描いていただけに、映画では海外が舞台になると聞いて驚いたファンも多いに違いない。そのアイデアについて、山田監督は「(メインキャラクターの一人である)澪が行きたがっていたから……という言い方でもいいですか?」と前置きした後で、「製作側の話をすると、映画なのである程度のスケールが必要になってくるというプロデューサーの話が来たんですよ。とはいえ、『けいおん!』は『けいおん!』なので、映画になったところで、びっくりする展開には持っていけないですよね。なので、唯たちにとってのスペシャルなものということで、ロンドンへの卒業旅行に」と製作の裏側をちらり。DVD&ブルーレイに収録されているテレビ未放送話のエピソードでは主人公たちがパスポートを取得するまでが描かれており、映画への伏線となっているように思われていたが、「あの話は実は、本編の流れのままに作ったんですよ。そのときは、唯たちが本当に海外に行くなんて思っていませんでした」と山田監督にとっても海外が舞台になることは意外だったようだ。
シリーズ第1期の「けいおん!」が初監督作であり、今回の映画が初の劇場監督作ということで、山田監督の本作への思いは人一倍だ。「わたし、めちゃくちゃ『けいおん!』好きなんですよ。もう、全部が」と語る口調も自然と熱を帯びてくる。「ファンは同志っていう感じです。ヒットしているかどうかは、よくわからないですね。『けいおん!』の話をできる人がいっぱいいるって感じで。インタビューなどではよく『わたしたちと唯たち』っていう言い方をするんですけど、『わたしたち』っていうのはファンの人たちをひっくるめての『わたしたち』なんです。だから、自分のことは制作者というよりもファンだと思っていて、そういう意味では、第三者的な気分かもしれないですね」と思いの丈を語った山田監督。「わたし、本当にこの3年間は『けいおん!』漬けなんですよ。もちろん、ほかの仕事はあったんですけど、自分の中で途切れることはなくて。でも、今回の映画でひと区切りつくと思うと……あ、こんな寂しいことは言うの、やめておきますね」と本音をのぞかせる場面もあった。
そんな生活だったからか、今でもアイデアはどんどん出てくるといい、「まだまだ妄想は広がりますね。唯たちがこういうことをしたら面白いだろうな、とか、こういうところに行ったらいいだろうな、とか。小ネタはいっぱい出てくるんです」と明かした山田監督は、多くのファンが待ち望んでいるシリーズ続編については「何もわからないですね。もしわたしが監督じゃなかったら嫉妬しちゃうかもしれない」と冗談めかして答えた。「でも、これからもずっと『けいおん!』のことを考え続けそうな気がします。『けいおん!』がなくなったら、わたし、しゃべることがなくなるかもしれない……」と山田監督にとって「けいおん!」が掛け替えのない存在であることをうかがわせた。
初の劇場版である本作では、海外が舞台になるといっても、「ファンタジーになることは避けた」と山田監督が言うように、描かれているのはテレビシリーズ同様、主人公たちの日常のきらめき。第2期の最終回では主人公たちの卒業式が描かれていたが、映画ではその直前の時期が描かれる。ラスト、きれいに円を描くように、テレビシリーズの最終回へとつながる展開は実に見事であり、シリーズのファンならば、鳥肌が立つような感動を覚えるに違いない。(編集部・福田麗)
映画『けいおん!』は公開中