韓国から最高に痛い映画『哀しき獣』が上陸! 殴る・ける・刺す・たたき切る!バイオレンスシーンが計146回!
体を張った激しいアクションには定評がある韓国映画の中でも、究極の痛みを追求したダークな作品作りで異彩を放つ鬼才ナ・ホンジン監督の最新作『哀しき獣』では、殴る、ける、包丁で刺す、おのでたたき切るなどの暴力シーンが、146回もあることが明らかになった。
これまでも韓国映画は、『オールド・ボーイ』や『アジョシ』などで壮絶なまでのアクションを描いてきたが、とにかく「痛い映画」という意味では、この『哀しき獣』の右に出る作品はない? まずは基本の殴る・けるのアクションは軽く82回を記録。そのほかにも包丁で刺すこと38回、おのでたたき切ること26回で、観ていてイタタタタ……と感じるシーンの総数は146回にも及んでいる。もちろんそれに伴う流血シーンも44回、さらに死者の総数は多すぎて不明という、前代未聞の事態を引き起こしている。
この映画の主人公は、中国の延辺朝鮮族自治州から韓国に密入国したグナム(ハン・ジョンウ)。ごく平凡なタクシー運転手である彼が、借金返済のために殺人の依頼を受けた時点でその暗たんたる未来は決まったようなものだが、意外にもこの男、いつも間一髪のところで危険を回避する動物的本能にたけていたことから、ストーリーは敵味方入り乱れての乱戦の様相を呈してくる。監督の前作『チェイサー』でもいい味を出していた、ハン・ジョンウとキム・ユンソクという人気と実力を兼ね備えた俳優たちを再度起用し、驚きの痛さを表現したことも大きなポイントとなっている。
日本と違い、成人男子に兵役の義務がある韓国では、軍隊に行ったことで初めて一人前の男性として認められるという風潮がある。一時的にせよ、入隊によって体を鍛えるという体験が染み付いているからかもしれないが、韓国映画の体を張ったリアルなバイオレンスシーンのクオリティーは高い。一時期、最高の体という意味の「モムチャン」という言葉がもてはやされたことからもわかるように、韓国では男女を問わず、肉体こそがものをいうといっても過言ではないのだ。
顔面パンチにボディーブロー、跳びげりといった猛烈キックだけでなく、ドスでぶすりとやることや、おので力任せにたたき切るなど、次々と繰り出される技の数々に目を覆いたくなるものの、あまりにも頻繁にそのようなシーンが登場するため、一体どこでまばたきをすればいいのかさえもわからなくなってくる。総数146回のバイオレンスシーンの痛さも、そのうちきっと快感になる!?(文:平野敦子)
映画『哀しき獣』は2012年1月7日よりシネマート新宿ほか全国公開