西島秀俊、主演作『CUT』初日にアミール・ナデリ監督と相思相愛トークを繰り広げて「まるで結婚披露宴みたい」と苦笑い
17日、映画『CUT』の初日舞台あいさつがシネマート新宿にて行われ、主演の西島秀俊とアミール・ナデリ監督が登壇し、2人が出会ってから6年越しで完成させた本作への思いをそれぞれ語ったほか、お互いへのリスペクトにあふれたトークを繰り広げた。
2005年の東京フィルメックスで出会って一緒に映画を作ることを約束し、その願いを本作で実現した西島とナデリ監督。兄からお金を借りて映画を製作していた売れない映画監督の秀二(西島)が、自分のためにやくざから借金をして死んでしまった兄に報いるため、殴られ屋をして借金を返済しようとするストーリーとなっている。
ユニークな役柄を演じた西島は「最初にスクリプトを読んだとき、映画化は不可能だと思った。先鋭的で、観客に受け入れられないのではないかと。でもナデリ監督が、『不可能を可能にすることがオレの映画だ』と言ったんです。撮影中もどんどん大変になっていって、毎日家を出る前に『今日も素晴らしいシーンが撮れますように』と祈っていた。そんな作品が、ついに公開になって……この瞬間を一生忘れないと思います」と感無量な表情に。そして、ナデリ監督の第一印象を聞かれた西島は「常人ではない、鋭い目をして、すごいエネルギーを発していた。会ったとき運命的なものを感じて……まるで(カップルのなれそめを語る)結婚披露宴みたいですけど(笑)。監督も同じように感じていて『一緒に映画を作ろう。オレは匂いでわかる』と言われました」とユーモラスにナデリ監督との出会いを振り返った。
一方、ナデリ監督は「日本で映画を作ることは大変。ルールや順序がはっきりしているから、信頼を得ないと最初の一歩を踏み出せない。西島さんが自分を信頼してくれたことによって、ほかの人も自分を信じてくれて、この作品を作ることができたのです。彼は大変才能があって、ハンサム!」などと西島を絶賛。トーク中も西島と何度も握手をしたり、肩に触れたりし、西島のほうもそれに笑顔で応じるなど、二人が絶大な信頼関係を築き上げていることがうかがえる空気感を醸し出していた。
そして最後に、西島は「みなさんがこの映画をたくさん観て下されば、上映館が増えていって、アート系の映画を観る機会が増えることになると思います。今の一番の夢は、この映画がシネコンにかかって、そこで舞台あいさつをすることです!」と力強く語り、観客から大きな拍手を浴びていた。
『CUT』はナント三大陸映画祭で2度のグランプリに輝いたほか、カンヌ、ヴェネチアなどの国際映画祭で作品を発表し続けている、イランの巨匠アミール・ナデリ監督が日本に招かれて監督した異色作。兄の借金返済のために「殴られ屋」となる映画監督・秀二(西島)が、パンチを浴びながら映画への愛憎をあらわにする姿を描く。第68回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門のオープニング作品に選ばれたほか、第36回トロント国際映画祭、10月の第16回釜山国際映画祭にも出品された。(古河優)
映画『CUT』はシネマート新宿ほかにて全国順次公開