「脱原発と言えないのはありえないこと」加藤登紀子、日本の国際的な対応に苦言
東日本大震災による原発事故で被ばくの危険にさらされた人々の現実を映し出すドキュメンタリー映画『フクシマ2011~被曝に晒された人々の記録』の公開記念舞台あいさつが18日、銀座シネパトスで行われ、本作のテーマ曲「神隠しされた街」を提供している歌手の加藤登紀子と稲塚秀孝監督が登壇した。
本作は、昨年の5月から福島県南相馬市、飯舘村を中心に約60日間取材を行い、地震と津波、そして原発事故に直面した住民の姿を映し出す作品。劇中では故郷を出るべきか、とどまるべきかと揺れ動く住民の心情にも迫り、加藤は「わたしは当事者じゃないので軽はずみにどちらがいいとは言えませんが、残ろうと決心をした人たちの自分の暮らしを自分の手で守ろうという執念のようなものはすごいなと思った。選択した人たちが抱えていく真実はどこまでも見守っていく必要があるべきだと思いました」と被災地への思いを口にした。
さらに加藤は、原発事故を起こした日本の国際的な対応に触れて「今日本がちゃんと新しい未来に向かって歩んでいけるかの瀬戸際だと思います。原発事故を起こしてしまった国が、世界に対して脱原発と言えないのはありえないことだと思う」と疑問を投げ掛け、苦言を呈する場面も。
最後には「今後も被災地に寄り添い支えていくべきだと思います」と加藤は訴え、「東京の電気を福島で作っていたわけです。わたしも東京、関東の人間として何をしたらいいのか、この映画を通して感じていただけるきっかけができたらいいなと思う」とこの問題が決して被災地だけの問題ではないと切々と語った。
本作は『二重被爆~語り部・山口彊の遺言』の稲塚秀孝監督が、東日本大震災で地震と津波、原発事故の三重苦を強いられた人々の姿を追ったドキュメンタリー。ナレーションを俳優の仲代達矢が務め、原発事故後の被ばくの危険にさらされながらも必死に生きようとする住民たちのリアルな声を届ける。(取材・文:中村好伸)
映画『フクシマ2011~被曝に晒された人々の記録』はヒューマントラストシネマ渋谷、銀座シネパトスほか公開中