演技派ウィレム・デフォーを直撃!絶滅のタスマニアタイガーを追い求める男を演じる!
映画『プラトーン』や『イングリッシュ・ペイシェント』などの秀作から、映画『スパイダーマン』や『インサイド・マン』などのハリウッドの大作まで幅広く出演してきた演技派俳優ウィレム・デフォーが、新作『ハンター / The Hunter』について語った。
同作は、過去に傭兵経験のあるマーティン(ウィレム・デフォー)は、絶滅したと思われていたタスマニアタイガーの生存情報を持っているバイオテクノロジー会社から、そのタスマニアタイガーの生体サンプルを手に入れる仕事を請け負うことになる。ところが、彼がその探索のための現地の拠点にした民家には、父親が消息を絶ち、母親が寝たきりの幼い子どもたちが住んでいたために、彼らと家族的な関係を持ち始めたことで、大きな変化が生じ始めていくというスリラー・ドラマ作品。
メソッド演技(役柄の内面を感情的に追体験すること)を特徴とするウィレムは、マーティン役を演じるうえで、実際に山にこもってリサーチをしたのだろうか。「山にこもったりはしなかったが、プロダクションが実際にオーストラリアで狩り(ハンター)をする、山などの環境知識にも詳しい人や、森林などの暮らしに慣れ、動物を捕らえるためのトラップなどを仕掛ける人たちを雇い、彼らからやり方を教えてもらったんだ。映画内でもトラップを使用しているシーンがあるため、それをスムースに見せるためには、しっかり学ばなければならなかった。それに、主人公のマーティンと自然との関連性を探索することは重要だったんだ」と語る通り、この撮影前の実演が映画内で信憑性を持たせているように思える。
山岳での撮影について「映画内では一人孤独にタスマニアタイガーを探索している設定だが、実際にはスタッフとともに撮影しているから孤独ではなかったよ(笑)! この映画は、自然がキャラクターとして描かれている。それに、タスマニア島の中でも僕らが撮影した場所は、かなり人里離れたところで、天気も頻繁に変わるため、常に自然というパートナーに対応している感じで撮影していた。でも、そんな環境が俳優としての僕を刺激してくれたよ」と満足のいく撮影環境であったようだ。
映画内の設定では、タスマニアタイガーを探索するために民家で、別の家族と暮らすマーティンだが、この家族に同情的な感情を抱いていく。「映画内のストーリーは、マーティンがタスマニアタイガーを探すことが主軸にあるが、その探索する過程において、マーティンはこの民家の家族を必要とし、彼ら家族も父親が消息を絶ったために、マーティンを必要としている」とお互いが支え合う関係であることを明かし、さらに「マーティンが依頼された仕事はものすごく難しい仕事で、マーティン自身も雇用者のバイオテクノロジーからプレッシャーを感じているうえ、マーティンはこの仕事を最後にこのような仕事から引退したいと思っている。そのため、彼のアイデンティティー(ルーツ)は、これらの状況下(民家の家族との生活や会社から仕事の依頼の狭間)で様変わりしていくんだ。この家族とかかわることで、マーティンは人間性を徐々に目覚めさせていくんだよ」と説明してくれた。
映画は、主役マーティンの過去の背景が語られないまま、すぐにオーストリアの地でタスマニアタイガーを探索するため、観客は感情移入しながら鑑賞できる作品になっている。今後ウィレムは、今年の4月にマドリードで舞台監督ロバート・ウィルソンと組んで舞台「ザ・ライフ・アンド・デス・オブ・マリーナ・アブラモヴィック(原題)/ The Life and Death of Marina Abramovic」に出演することになっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)