親子三代にわたって受け継がれる映画魂!マリオ・ヴァン・ピーブルズ、二人の息子と共演
映画『ニュー・ジャック・シティ』や『バッドアス!』のマリオ・ヴァン・ピーブルズが、新作『ウィー・ザ・パーティー(原題) / We the Party』について、共演した実の息子二人、マンデラ・ヴァン・ピーブルズ、マカイロ・ヴァン・ピーブルズとともに語った。
マリオ・ヴァン・ピーブルズ 映画『ALI アリ』写真ギャラリー
同作は、父親(マリオ・ヴァン・ピーブルズ)が学校の教師をしている高校生のヘンドリックス(マンデラ・ヴァン・ピーブルズ)は、さまざまな人種が通うロサンゼルスの学校で、自分の居場所を見つけながら恋をし始めるが、学校生活には多くの危険が待ち受けていたという学園ドラマ作品。マリオ・ヴァン・ピーブルズはこの作品で、製作、脚本、監督も務めている。ちなみに、マリオの父親でブラック・ムービーの草分け的存在のメルヴィン・ヴァン・ピーブルズもカメオで出演している。
実の息子を出演させるだけでなく、彼らを監督したことについて「僕は長いこと父親(メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ)のもとで(多くのことを)学んだ。それが、今作では息子の周りの環境を通して、息子から学ばされたんだ。だから、僕の作りたい映画と言えるかわからないが、現在の学校を(息子たちの視点から)描いた忠実なものになったんだ。それと、リサーチの過程ではバラク・オバマが大統領になったことで、黒人生徒に対する先入観も典型的なヒップホップやギャングスタのイメージから変わりつつあることに気付かされたよ」と語るマリオ監督は、実の息子を初めは私立の学校に通わせていたが、途中から公立の学校に編入させ、学校内での環境の違いを学ばせたそうだ。
マリオ監督は少年時代に、父親(メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ)の作品『スウィート・スウィートバック』でポルノ女優とセクシーなシーンを演じていたが、今作では逆に父親として息子のラブシーンの演出をしてみて「まず最初に僕が、自分のやりたい演出で撮影してから、最後に今作で主役を演じた息子のマンデラに、自分のやりたい演技で演じてみたらどうだと指示するんだ。そこで、マンデラは新たな感覚を見出してくれる。これはもう一人の息子マカイロでも同じだ。大切なのは、息子たちがベストな演技ができる環境を僕が作ってやることだ。もっとも、僕自身も父親から仕事に対する概念を学ばされたんだ。彼は自分の作りたい映画を制作することは、自分が食べたいと思うものを料理することと同じだと言っていたよ。それは自分が(その作業に)かかわったことで、(結果がどのようになろうと)満足できるものであるからなんだ」と語った。ちなみに、この映画でマリオは自ら予算も捻出している。
この映画では、新旧にわたるヒップホップが使われているが、息子たち二人はマリオ監督をロサンゼルスのクラブに連れて行ったそうだ。「今どのような曲がはやっているか知るために、父親(マリオ)を連れていこうとしたが、クラブに居る連中たちの前で自分たちが父親を連れてくるなんて格好悪いことをしたくないから、父親に細めのジーンズをはかせたり、バックを背負わせたりして、僕らの仲間たちと変わらない格好をさせてクラブに連れて行ったんだ。そのクラブでは、ヒップホップ・アーティストのThe RejectzやYGなどがパフォーマンスをしていて、後に彼らの曲を使用したことがこの映画の新鮮さを引き出すことになったんだ」とマンデラが興味深いエピソードを話した。
最後にマリオは、映画内で最初に行われているパーティーシーンは、実際にマリオの自宅で撮影したことを明かした。自分の作りたい映画を大きな配給会社の手助けなしで製作していくマリオ監督の姿は、メルヴィン・ヴァン・ピーブルズを受け継いでいる。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)