特殊メイクアーティストの巨匠リック・ベイカーを直撃!マイケル・ジャクソンのPV「スリラー」について語る!
アメリカ映画界の特殊メイクアーティストの巨匠リック・ベイカーが、新作『メン・イン・ブラック3』と過去に携わった作品について語った。
リック・ベイカーは、特殊メイクアーティストの先駆け的な存在であるディック・スミスのもとで学び、1982年に初めて設けられたアカデミー賞メイクアップ賞を映画『狼男アメリカン』で受賞し、これまでなんと7度もオスカーを手中に収めているハリウッドを代表する特殊メイクアーティストだ。
新作『メン・イン・ブラック3』と、シリーズ3作でタッグを組んできたバリー・ソネンフェルド監督について「今作だけでも、8か月かけて127体ものエイリアンを作ったんだ。映画内では全部使われていないが、シリーズ1、2を通していつも余分な数のエイリアンを作るほど、準備万端で臨んでいる。シリーズ第1弾ではバリー・ソネンフェルド監督から、これまで見たことのないようなエイリアンを作ってほしいと言われたんだ。そのときの僕は、『それは難しいよ。ただ少し似ていても、よりクールに見えるエイリアンならできる』と答えたんだ。今作は1969年に設定が戻ることで、ヘルメットを被ったり、虫のような目をしたレトロのエイリアンを作ることになったんだ」と明かした。
『メン・イン・ブラック3』の悪役ボリス・ジ・アニマルについて「脚本には映画『イージー・ライダー』のデニス・ホッパーみたいな役柄が記されていたんだ。ただ僕はそれだけじゃ、怖さを感じないと思ったんだよ。でも映画内には、この悪役ボリスが1969年に普通にニューヨークの街を歩くシーンもあって、周りの人々が見てすぐに変だと思えてしまうようなキャラクターにはしたくなかったんだ。そこで、もし実際にバイクを乗り回す怖そうな男に出会ったら、普通の人はあえてその男と目を合わせないだろうということを利用して、普段は気付かない手のひらからエイリアンが出てきたり、ゴーグルしている片目が変なんだ」と悪役の特徴を話した。
ディック・スミスとの出会いについて「僕が子どもの頃はテレビが普及し始め、ホラー、Sci-Fi、ファンタジー作品などに興味を持っていたんだ。それがある日、撮影の裏側を載せた“Famous Monsters of Filmland”というホラー雑誌で、初めてメイクアーティストという仕事があることを知ったんだ。もちろん、その当時はメイクアーティストの専門学校はなかったし、情報も少なかった。そこで、図書館に行ってメイク・アップに関した資料を集めると、いつもディック・スミスの名が載っていたからなんだ」と語り、その後すぐ弟子入りをしたそうだ。
あの有名なマイケル・ジャクソンのPV「スリラー」について「『狼男アメリカン』のジョン・ランディス監督が電話をしてきて、歌手のマイケル・ジャクソンが『狼男アメリカン』が大好きで、今度のミュージックビデオでホラーを描きたいらしく、マイケルの新曲『スリラー』を送るから、アイデアを用意してくれと言われたんだ。送られてきた曲を聴いてみて、僕はジョン・ランディス監督に、もしゾンビがダンスしていたらクールじゃないか?と提案したんだよ。ただ、長時間のメイクアップにマイケル・ジャクソンが耐えてくれるかが心配だったが、彼はメイクアップのコンセプト自体を気に入ってくれたんだ」と思い出を話した後、ステージに立つマイケルと、普段のシャイなマイケルの違いに驚いたことも明かした。
まだまだ聞きたい話はたくさんあったが、リック・ベイカーのようなメイクアーティストが居ることで、ますます映画製作の奥深さを知った気がした。ちなみに彼は今、伝記本を執筆しているそうだが、突如アンジェリーナ・ジョリーに呼び出され、彼女の新作『マレフィセント(原題) / Maleficent』で、アンジェリーナ演じる魔女のデザインを手掛けることになったそうだ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)