名優フランク・ランジェラを直撃!日本の高齢化社会を彷彿させるロボットの介護とは?
映画『ドラキュラ』、『フロスト×ニクソン』などに出演し、1970年代前半から現在まで長きにわたって映画や舞台で活躍してきた名優フランク・ランジェラが、サンダンス映画祭で話題となった新作『ロボット&フランク(原題) / Robot & Frank』について、ジェイク・シュライアー監督とともに語った。
フランク・ランジェラ出演 映画『フロスト×ニクソン』写真ギャラリー
同作は、ロボットの技術が発展した近未来で元宝石泥棒だったフランク(フランク・ランジェラ)は、現在引退して一人暮らしをしていたが、痴呆の兆候が表れたことを心配した息子ハンター(ジェームズ・マースデン)が、ロボットを購入してフランクの身の回りの世話をさせる。頑固なフランクはロボットにしばらくなじめなかったが、徐々に賢いロボットに興味を抱き始め、そんなロボットと宝石泥棒を計画するが、ひと波乱起きてしまうというドラマ作品。この他に、リヴ・タイラーやスーザン・サランドンが出演し、監督は今作がデビュー作となるジェイク・シュライアーがメガホンを取っている。
今作は短編作品から始まったらしい。「僕と脚本家のクリストファー・D・フォードは大学からの知り合いで、ある時彼は日本の老人の介護にロボットが挙げられていた記事を読んだんだ。そのとき初めて日本が老人の介護をするためにロボットの開発を本格的に始めていることを知ったんだ。そこで僕らは、そのアイデアを基に短編を作ったんだ。そして4年前にこの短編を長編化してみたらどうかと考え、二人で企画したのが製作の始まりだったんだ」とジェイク監督が明かした。
近年の技術の発展は、人間関係の質を変えているのではないか、との質問に「この映画でも主人公のフランクはロボットに対して反感を持っていて、技術の進歩に不満を持っている。だが、多くの人々は技術の進歩に対応し、最近では本はキンドル(電子書籍)などで読まれるようになり、僕自身も技術の進歩が人間関係を駄目にするとは思っていないんだ。もちろん、技術の進歩が人間関係に変化をもたらすことはあるかもしれないが、逆にそれがどのように今後変化をもたらしていくか、興味深いとも思っているんだよ」とジェイク監督は個人的な見解を語った。
映画内ではロボットに対応していくフランク・ランジェラだが、実際には技術の進歩には疎いらしい。「僕の世代はみんな同じで、限られた技術の進歩にしか対応できていない。僕の娘はつい最近、携帯でのメッセージの送り方を教えてくれたくらいだ! それがあまりにも単純なものだったから、これまでできなかった自分が恥ずかしかったくらいだよ。僕は映画祭に参加するとよくプレゼントとして、キンドル(電子書籍)やi-padなどをもらうが、いまだにそれらを使いこなすことができないんだ。ただ、僕がこういった技術の進歩をなかなか受け入れないのは、自分でできることは自分で(体を動かして)やろうと思っているからでもある」と自分の健康も考えてのことらしい。
現在の日本のロボットの技術は、老人を介護するといよりは、むしろ仲間や友達として老人を安心させるために同伴している感じだが、これ以上のロボット技術の進展は必要なのだろうか。「すべてが(ロボットのために)便利になりすぎたために、その便利さから逆に人との関係を避けようとする人たちが出てきてしまい、それは危険だと思っているんだ」とフランクが語ると、ジェイクは「もちろん、僕らが老人の介護をできるのなら、それにこしたことはないが、一人暮らしをしている老人を、現実的にどの程度僕らが老人とともに時間を過ごせるかはわからないと思う……。だからこの映画でも、ロボットが人間のように介護ができるかという問いを追求しているんだ」と話してくれた。
映画はアメリカ作品ではあるが、これからの日本の高齢化社会の中で、いかなる対応が必要か考えさせられる作品になっている。さらに、フランク・ランジェラのアカデミー主演男優賞候補に値するほどの熱演にも注目してほしい。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)