『ホビット』『プロメテウス』制作に参加する日本人!ピーター・ジャクソンの下での苦労話も…
2日、御茶ノ水のデジタルハリウッド東京本校で特別講義「VFX大作のワークフロー最前線」が行われ、同行卒業生で、ピーター・ジャクソン監督らが設立したニュージーランドのVFXプロダクション「Weta Digital」社に勤める多田学氏が、ハリウッド映画製作の現場について語った。
同社でリードテクニカルディレクターとして働く多田氏は、これまで『キング・コング』『アバター』『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』『プロメテウス』などにスタッフとして参加。この日はそのキャリアを踏まえて、ハリウッド超大作におけるVFX作業の行程を解説。効率よくハイクオリティーな仕事が行われる、現地における仕事の流れを紹介した。
現在は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前日譚(たん)となるファンタジー大作の前編『ホビット 思いがけない冒険』を手掛けている多田氏。ピーター・ジャクソンら著名な監督たちとの仕事について、「普通のハリウッド映画なら予算は決まっているので、制作会社がこれ以上は(予算がかかるのでVFXを作り込んでは)ダメということもあるけど、ジャクソンや(ジェームズ・)キャメロン、(スティーヴン・)スピルバーグといった人たちはアーティストタイプなので、VFXには結構自由に意見を言ってきますね」と解説する。
中でもジャクソン監督との仕事にふれた多田氏は「ピーターはデジタルに配慮しない撮影が多いんです。『キング・コング』では、背景に(合成用の)グリーンスクリーンを張っているのに、金髪の女優アン(ナオミ・ワッツ)を立たせた場所の背景がスクリーンからずれて背景が白い壁になってしまい、合成ポイントがずれたこともあった」と述懐。「そうすると合成作業がヘビーな仕事になるんです。『ホビット 思いがけない冒険』では、(前日譚なのに)俳優は年を取っているので、顔のしわをとったりする作業も出てきます。これも大変ですね」と苦労を吐露したが、それだけに自分の仕事に誇りを持っている様子だ。
そして最後に多田氏は、「海外で生活することはいいこと。多様な価値観があって、視野が広がりますから。日本で行き詰まっていても、海外で違った価値観に触れることで解決することもあります。そういう、多様な人と出会えるという意味で、海外での仕事はおすすめできると思います」と語り、ハリウッドでの仕事を望むクリエーターの卵たちに、エールを送った。(取材・文:壬生智裕)